これらの取り組みを始めて5年が経ち、進学実績は徐々に伸びている。特に06年度入試における首都圏の主要私立大の現役合格者数は、取り組みを始める前の00年度と比較すると、7倍以上になった。しかし、井上先生はまだ課題があるという。
「生徒が希望しながらも最難関の大学にはまだ手が届かない状況です。一つの取り組みですべての生徒を刺激したり、学力を向上させたりするのは難しい。いろいろな仕掛けをすることで、1人でも多くの生徒の進路希望をかなえていきたい」
今後、もっと活用したいと考えているのは「チューター」だ。順天中学校・高校では、平日は20時まで、休日は16時まで、個別学習室を開放している。このとき、高3生対象のアドバイザーとして卒業生のチューターが常駐している。前述のリピート学習時にも5、6人のチューターが在席し、生徒の質問に答える。チューターは毎年、担任から候補者を推薦してもらい、チューター担当の教師たちで検討。在校生が目標とするような大学に進学し、かつ受験などでの挫折体験がある卒業生に依頼している。年度当初に研修を行い、学校の考え方、指導方針などを伝え、学校の指導とブレがないようにしている。現在約30名が登録。チューターの経験を、自らの就職活動にも生かすことができるとチューター側からも好評だ。
「生徒は教師よりもチューターの言葉をよく聞く傾向にあります。進路や学習法の相談もしています。年齢が近く、同じ環境で勉強してきた先輩を、自分たちのロールモデルとして捉えられるからでしょう」と片倉先生は苦笑しながらも、その存在の意義を語る。順天中学校・高校はカリキュラム編成やシラバスの見直しと共に、チューターをうまく活用しながら取り組みを進化させたいと考えている。
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