「あのとき、別のアドバイスをしていれば――」。懸命に指導をしていても、ときに自分の進路指導に疑問を持つことがあるのではないか。
川口市立県陽高校は1学年4クラスと市内で最も小さい学校だ。生徒と教師の関係が密接で、手厚い指導をしてきた。しかし、進路指導については必ずしも満足できる状態ではなかった。
「本人の希望で専門学校に進学した生徒でも、成績は十分大学を狙える者がいました。そうした生徒には大学進学を強く勧めるべきだったと考えることもありました」と、進路指導主事の嶋津昌吾先生は明かす。
フリーター問題もあった。1学年の15%が進路未決定のまま卒業、という年もあったのだ。
「すべての原因は、進路を考え始める時期が遅すぎることでした。本校の生徒には中学校までの基礎学力が身に付いていない者が多く、一般入試での大学合格はあまり望めません。推薦入試に間に合わなければ、結論を先に延ばし、一般入試に失敗すれば専門学校に進学するか、進路が決まらないまま卒業してしまう。それがフリーターを生み出すという悪循環に陥っていたのです」(嶋津先生)
学年ごとに進路指導の方針が異なり、学年団と進路指導部との足並みがそろわない場面も見られた。早い段階から進路について真剣に考えさせると共に、教師が一丸となって指導する体制が必要だったのだ。
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