真のリーダー育成を目指して 人それぞれリーダーシップのスタイルがある
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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ときに多様な意見を調停する力も必要

――東ティモールの県知事時代には、国籍や文化が異なる多くの人たちをまとめ、大変なご苦労があったと思います。

 

  当時の東ティモールはインドネシアからの独立運動による内戦で、国内の家屋や公共インフラはほぼ全滅に近い状態でした。そんな暴力の支配を断ち切り、文民による「法と秩序」の確立が我々の使命でした。
  私はコバリマという県の知事として、約50名の国連民政官と約50名の国連文民警察、22名の国連軍事監視団、約1500名の国連平和維持軍(PKF)を統括する立場にありました。しかし、県知事の地位は、あくまで国連から与えられたもの。警察の所長や多国籍軍の司令官クラスの人には、私より年上の人が多い。しかも東洋人とあって、私の指示に対して反発を感じる人も多く、小さな衝突は日常茶飯事でした。

 

――そうした中でどのように組織をまとめていったのでしょうか。

 

  多くの組織を束ねる中で学んだことは、人それぞれの個性や性格に応じたリーダーシップの発揮の仕方があるということです。私は元来、内向的な性格で、快活に周りを引っ張るタイプではありません。しかし、普段は寡黙でも、会議の際、議論の流れをしっかりくみ取り、問題提起をしながら行き詰まった議論を前進させたり、建設的な着地点へ到達させるようなキーワードを絶妙なタイミングで言ったりする。そうすることで周囲からの尊敬を集めたり、一目置かれたりすることもあるのです。
  国際紛争の現場では、さまざまな意見を調停するコーディネーターのようなタイプのリーダーが求められる場面が少なくありません。むしろこうしたスタイルこそ、日本人に合ったリーダーシップの取り方だと思います。派手な身振りや声の大きさなどで人を引き付けることだけが、リーダーシップを発揮する方法ではないのです。私がいつも注意していたのは、どんなにすばらしいリーダーがいても、決してその人を真似しないということでした。モデルをつくってしまうと、自分に合わないスタイルであっても、それを押し通そうとしてつい無理をしてしまう。そうすると、部下にも無理を強いることになり、組織そのものがまとまらなくなるのです。


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