次に80年代以降の教育改革の流れを簡単に追ってみます。
最も密度が濃いと言われた70年代の学習指導要領は、80年に「ゆとり教育」が掲げられて、学習内容の2割が削減されました。その後、80年代半ばの臨時教育審議会を機に急進的な教育改革が続けられてきました。92年に部分的に始まった「学校週5日制」は02年に完全化され、授業時数は大幅に減りました。同時に「総合的な学習の時間」が導入され、更に教科学習の時間が減少しました。
学習時間を減らしているのですから、教科学力が低下するのは当然です。しかし社会を見渡せば、高度情報化社会・IT社会や知識社会などと声高に叫ばれ、高校卒業までに到達を期待される教育水準は、むしろ高まっています。この状況を踏まえると、これまでの教育改革は時代に逆行しているといわざるをえません。
また、小泉政権の「官から民へ」というスローガンの下、公立学校に企業の経営・運営手法を取り入れる動きも強まってきました。しかし学校教育は企業とは違って、すぐに成果を出せるものではありません。市場原理を安易に学校教育に持ち込もうとする考えには疑問を感じます。
更に私が危惧しているのは、単線型のシステムが崩れつつあることです。前述のように、戦後日本では単線型の学校教育システムが整備されてきました。その高度なシステムは、複線型を主流としていたヨーロッパ諸国の教育改革のモデルにもなってきました。ところが単線型は“画一的”な教育を招いていると誤解され、習熟度別学習や発展的学習、学校選択制、エリート的中高一貫校や教育特区校などにより、教育機会の“格差化・差別化”が進んでいます。
必ずしも時代に合っているとは言えない教育改革が矢継ぎ早に実施されているのですから、教育現場に混乱が生じるのは無理もありません。
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