特集 高校教育の「不易と流行」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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これまで以上に生徒の可能性を広げるキャリア教育が重要に

 そうした状況の中で、高校の教師には何が求められているのでしょうか。簡単なことではないかもしれませんが、私は改革の流れの中でも、これまでに教育現場が大切にしてきた文化を守ろうとする気持ちが大切になると思います。

 これまでの日本の高校では、前述のように追試や特別課題を設けるなどして、個々の生徒をフォローする体制を整えてドロップアウトを防いできました。世界的に見てもこれは非常に素晴らしいことだと思います。

 教育改革が進展する中にあっても、学校行事や部活動の時間を確保しようと努力する高校も少なくありません。確かに、行きすぎた部活動や学校行事を見直すことに異論はありませんが、それらの教育効果を適切に活用することは今後の学校教育にも必要だと考えています。

 一方、社会の価値観が多様化する中で、高校にはますます多様な役割が求められるでしょう。中でも進路指導は、従来の進学指導にとどまらず、キャリア育成という広い視点での指導が重要になります。特に普通科高校のこれまでの進路指導は、大学の合格実績に引きずられすぎていました。しかし、それでは予備校の指導の方がより実戦的だと生徒に言われかねません。では、高校には何ができるのでしょうか。

 その点ではアメリカの高校の進路指導が大いに参考になります。アメリカでは早くから専門のガイダンス・カウンセラーが各校に数名配置され、1年次から生徒の将来設計に関する面談・指導を行っています。将来どのような仕事に就きたいか、大学で何を学びたいか、どんなキャンパスライフを送りたいか、といった多様な視点から大学を選ぶ支援をしています。日本の状況に照らすと、担任の教師が面談を丁寧に行う、ということになると思いますが、そうしたときこそ、「一人ひとりの生徒をしっかり見る」という日本の教育の強みを生かしてほしいですね。

 近年、日本でも、「総合的な学習の時間」でのインターンシップをはじめ、生徒に多様なキャリアを模索させる指導が盛んになってきています。そうした取り組みを引き続き充実し、これまで以上に生徒が自分の好み・適性や可能性を見つめ直せる機会を豊かにしていくことが、今後の高校の重要な課題だと思います。

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