特集 高校教育の「不易と流行」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「自主自律」「自重互敬」を守り続ける

 そうした中、教師のより所となったのは、伝統校としてのプライド、そして旧制一中の流れをくむ岡山朝日高校の古き良き理念だった。「自主自律」「自重互敬」を校是とする岡山朝日高校では、生徒の人間性の涵(かん)養を第一目標とし、生徒が自ら勉強し、自ら進路を開拓していく「一中精神」が受け継がれてきた。授業は厳しく手抜きを許さないが、生徒の自主性を可能な限り尊重して、1、2年生では放課後の補習や追試などは行わず、週末課題やノートチェックもなるべく行わないというスタンスを貫いた。

 岡山朝日高校の「自主自律」を端的に示すエピソードがある。岡山朝日高校では、朝と帰りのホームルームを設けず、校内放送も原則として行わない。そのため生徒は、授業の変更や行事の集合場所・時間などを、白板に告知された連絡を通して知る。つまり、生徒が学校生活全般のスケジュールを常にチェックし、自らを律せざるをえない状況をつくり出し、生徒を大人として扱うことで、生徒の自律を促す工夫をしている。

 もちろん、生徒一人ひとりの将来に思いをはせ、進路指導では、「入れる大学」に入学させるのではなく、たとえ浪人をさせてでも「入るべき大学」に合格させる学力を涵養する方針を貫いた。伝統校らしい「やせ我慢」ともいえるこの姿勢の中に、時代は変わっても守るべき岡山朝日高校らしさがあることを教師のだれもが感じていた。

 「本校にとって『自主自律』『自重互敬』は、言葉だけのものではありません。どんな時代にあっても、本校が本校であるためのより所です。それを守り続けたからこそ、学校の特色づくりが求められる今日まで、岡山朝日高校らしさを維持しえたのだと思います」と柴岡校長は強調する。


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