特集 高校教育の「不易と流行」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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単独選抜への移行で復活を果たす

 岡山朝日高校の「やせ我慢」が花開くときが来た。99年に岡山県の総合選抜制度が廃止され、単独選抜に移行。そして、単独選抜1期生が卒業した01年、東京大・京都大・医学部への進学者数が前年度の15名から一挙に37名へと、大躍進を遂げたのだ。04年以降はコンスタントに50~60名が合格するなど、2校・3校による総合選抜時代の輝きを取り戻したのである。

 単独選抜になれば、岡山朝日高校に出願者が集まるのは、ある程度予想されたことだった。しかし、短期間のうちに大躍進を遂げたことで、県内外からの注目が集まった。完全復活の要因はどこにあったのだろうか。

 躍進の原動力になったのは、総合選抜制度時代、実績が出ない時期にあっても、130年以上の歴史の中で培ってきた「自主自律」「自重互敬」といった「一中精神」と、教育活動のノウハウを継承し続けてきたことだという。

 「長い総合選抜の時代には、進路指導の方法や部活動の考え方、保護者との協力の仕方など、開校以来持っていた独自のノウハウをどのようにバランスよく維持していくかという苦労がありました。本校の場合、単独選抜になり学校の独自性が問われる時代になったときに、それまで守り続けた教育スタイルをすぐに取り戻せたことが、一層の拡大・深化につながったのだと思います」(柴岡校長)

 例えば、岡山朝日高校の伝統の一つに、校内実力テストによる「素点主義」がある。共通一次試験、センター試験の導入に伴い、多くの学校が外部模試の偏差値で生徒の学力を測るようになる中、岡山朝日高校では外部模試と並行して、教師自らが作問する実力テストを継続し、あくまで素点による進路指導にこだわった。これによって、教師の教科指導力や進路指導力の向上を図るシステムが維持されたことが大きかったという。

 岡山朝日高校では、年4回の実力テストの平均点は、毎回43~45点になるように決められている。志望校の合格可能性は、順位や偏差値ではなく、この得点で判断する。これらのデータを毎年積み上げていくことで、「東京大の文科I類に合格するためには、平均67点以上取る必要がある」という判断が可能になるという。

 実力テストの平均点が年によって変動すると、進路指導の指標として機能しなくなる。担当者には、平均点が一定となる作問力が求められる。そこで、教科ごとに作問の検討会を行い、「この問題は難しすぎる」「選択肢の作り方が甘い」など忌憚(たん)のない意見交換を続けている。こうしてベテラン教師のノウハウが若手教師に受け継がれ、教科指導力を向上させることができるのだ。

 更に、実力テストのデータと実際の大学入試の結果を比較することで、「この時期にこの点数なら東京大は合格範囲内」「今は学力が足りないが、1浪すれば大丈夫」といった判断もできるようになるという。

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