創立以来の伝統を一貫して守り続ける五条高校だが、具体的な指導方法は、社会環境や生徒・保護者の気質変化に伴って変えている。
「進学実績が上がり続けたころは、教師にも生徒にも、とにかくがむしゃらに勉強するという雰囲気がありました。補習や課題は、教科ごとの裁量で出せるだけ出し、生徒はもがき苦しみながらもすべてこなしていました。しかし、近年はそうしたことに耐えられる生徒が少なくなり、課題の量も教科間で相談して調整しています」(貝沼先生)
ただし、課題として出したものをすべてクリアさせる方針は、従来と変わらない。提出物をクリアしなければならないというプレッシャーが、生徒をよい意味で成長させるのである。やるべきことをきちんとやらせる伝統は、五条高校の教師にとって守り続けなければならない「五条高校らしさ」の一つなのだ。
また、2年生は早朝、3年生は放課後の18時まで、補習を受ける生徒たちの姿も以前のまま。「量をこなす指導」は五条高校の伝統として今も引き継がれている。
「いつの時代の卒業生に聞いてみても、『あのときの補習は苦しかった』『暑い中、頑張った』といった感想が出てきます。苦しい中でやり抜いた経験は、成長の糧となって、財産として残っていくのではないでしょうか」と河村先生は言う。
最後までやり遂げるのは、学習だけではない。1年次に生徒全員が入部する部活動についても、うち95%は3年生まで続けるという。何事にも一生懸命に、最後までやり遂げることが「五条生らしさ」なのだ。
こうした「やるべきことをきちんとやらせる」指導によって、五条高校は「進路希望を満たす学校」として地域の信頼を獲得してきたのである。複合選抜制度導入をチャンスに、他地域から優秀な生徒を集めることができたのも、「五条高校らしさ」を守り続けたからといえるだろう。
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