特集 高校教育の「不易と流行」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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プロセスを大切にする進路指導に転換

 進路指導にも変化が表れている。かつては、「名古屋大に○名」といった数値目標が掲げられていた時期があった。しかし今は、どこの大学に何名入ったという「結果」よりも、進路先を決め合格に至るまでの「プロセス」の方を重視する指導に転換しつつある。

 「『総合的な学習の時間』の研究指定を受けたこともあり、近年は生徒一人ひとりの適性や志望をこれまで以上に尊重するようになっています。それまでは、生徒の進路保障を追い求めるあまり、生徒の学校生活に対する希望や満足を満たしきれていない部分もありました。単に名古屋大に何名入ったのかということではなく、生徒一人ひとりが高校3年間で何を考え、どのように成長してきたのかが大切です。生徒自らが成長を実感し高校生活に満足できることに、我々教師自身もこだわるようになってきています」(河村先生)

 学年全体で生徒の情報を共有し、その将来までを見据えて、一番よい進学先はどこなのか、生徒と保護者、そして教師の三者で徹底的に話し合う。各学期2回の進路検討会で、学年団の全教師はすべての生徒の志望や成績を把握。受験校決定の時期になると、進路指導室に詰めて夜遅くまで話し合う光景は、昔も今も変わらない。もちろん、生徒が志望するままに大学を受験させるわけではない。「生徒の力プラスアルファの大学を目標とさせることが重要」と河村先生は述べる。

 「同じ着地点でも、苦しみ、悩み、ときには涙を流してたどり着くという経験が大切です。生徒に少しずつプレッシャーをかけつつも、それを乗り越えて自分なりの答えを探してほしいと願っています」

 しかし、地元志向の強い保護者は依然として多い。近年は名古屋市近辺から通う生徒も増え、保護者の意識も多様化しているが、それでもまず名古屋大、名古屋工業大を目指し、それが難しければ岐阜大や三重大、それも厳しければ愛知県内の私立大と、近隣の大学にしか目を向けていない場合が多いという。

 「例えば、将来マスコミへの就職を希望する生徒にとっては、東京の大学に通う方が就職の際、プラスになるかもしれません。公認会計士や弁護士など目指す資格がはっきりしているのであれば、東京や大阪でも資格取得実績の高い大学・学部に行かせる方がよいでしょう。保護者の方にもそうした広い視野を持っていただくことが、生徒の進路希望をかなえる上で重要になっています」(河村先生)

 進路説明会や面談を通して、保護者と積極的にコミュニケーションを取るのもそのためだ(図2)。保護者を巻き込みながら、満足度の高い進路実現を目指すことで、更に地域での求心力を高めていこうとする五条高校の姿勢がうかがえる。

図2

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