特集 高校教育の「不易と流行」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 24/24 前ページ

任せる機会を積極的に設けることで若手教師は育つ

高田 最近『VIEW21』でもよくテーマに取り上げているのは、「組織として教師の力量をどう高めていくか」ということです。特に昔と比べて、今は同一校の在任期間が短くなっていますから、先輩教師のノウハウを若手にどう継承していくかが大きな課題となっています。先生方はこの問題をどのように捉えていますか。

 

松高 私が若いときに先輩教師に教えられた言葉で、「夜7時までは生徒のための時間、7時から8時までは若手教師のための時間、8時以降が自分の時間」というのがあります。私も中堅教師になった今、この考えを引き継いでいます。こうしたよい意味での「徒弟制度」は、ノウハウの継承が課題となっている今だからこそ、教師集団全体の財産として受け継いでいく必要があると思います。

 教師の力量アップのためには、学年間や分掌間、あるいは学校間の壁を取り払うのはもちろん、県の壁を越えた教師間の情報交換も重要でしょう。実際、他県の会合や学校にも積極的に出かけるようにしていますし、他県からの学校訪問も歓迎しています。

 

山口 同感です。山形東高校での勤務時に、岩手県立盛岡第一高校の先生を招き、進路講演会(職員・生徒・保護者参加)で話してもらったことがありました。若手教師は相当な刺激を受けていましたね。

 

松高 学年や教科の壁を取り払う面で重要なのは、進路検討会などのときに、クラス担任や進路指導部の教師だけではなく、教科担任の教師にも参加してもらうことです。体育科や音楽科の教師も加わると、情報に厚みが出て、教師全体で生徒を育てていこうという意識が醸成されます。これを1年次から行う学校とそうでない学校では、大きな差が出ますね。

 

船戸 3年生の進路検討会に、他学年の担任、副担任を加えることも重要です。年々変化する入試制度への対応という意味でも、進路指導や学習指導の在り方を学年を越えてみんなで考えていくという意味でも、効果的です。

 

高田 若手教師の育成で工夫できることは、ほかに何があるでしょうか。

 

船戸 群馬県では10年ほど前から1年生の初期指導に力を注ぎ、入学直後に2泊3日のオリエンテーションなどを行っています。私が高崎高校在任中には、そのプロジェクトメンバーに若手教師を2名選び、彼らを中心に計画を立てさせるようにしました。若手は任せることによって伸びていくものだと考えたからです。

 

高田 当時高崎高校では、さまざまなプロジェクトチームを立ち上げていたようですね。

 

船戸 校長の強いリーダーシップで、2年先、3年先を見据えた学校運営の戦略を練るプロジェクトチームをいくつも立ち上げていました。プロジェクトチームで検討して立てた案を、職員会議にかけて了承を得るという方法です。どのプロジェクトチームにも、若手を積極的に起用していました。

 若い先生は、職員会議のような大人数の場だと、なかなか発言のチャンスがありません。しかし少人数のプロジェクトチームであれば、積極的に発言でき、参画意識も持てます。自分の案が職員会議で通れば、自信にもつながります。

 

松高 本当はベテラン教師が自分たちで進めた方が、効率的ですし、失敗も少ないのですが……。でも、あえて若手に任せるという姿勢が、我々には求められているのだと思います。

 

山口 あとは先輩教師が後輩に、きちんと「思い」を伝えていくことです。行事のマニュアルを作っている学校は多いと思います。確かに、マニュアル通りに進めれば事はうまく運びます。けれども同時に、「何を実現したいのか」という思いまで後輩に伝えないと、取り組みは確実に形骸化します。当たり前のことですが、教師間のコミュニケーションを意識的に図っていくことが、組織としての力量を高めていくための根本になると思います。

写真

  PAGE 24/24 前ページ