指導変革の軌跡 茨城県立下妻第一高校「進学実績の向上」
茨城県立下妻第一高校

茨城県立下妻第一高校

旧制中学をルーツに持ち、創立100年を超える茨城県下有数の伝統校。茨城県西部を代表する進学校として寄せられる地域の期待に応えるべく、教職員一丸となったきめ細かな指導を実践している。

設立●1897(明治30)年

形態●全日制/普通科/共学

生徒数(1学年)●約280名

06年度進路実績●国公立大には、東京大1名、東北大3名、筑波大13名、千葉大12名、茨城大44名など134名が合格。私立大には、早稲田大8名、慶應義塾大3名、東京理科大23名など延べ560名が合格。

住所●茨城県下妻市下妻乙226-1

TEL●0296-44-5158

WEB PAGE●http://www.
shimotsuma1-h.ed.jp/


青柳正美

▲茨城県立下妻第一高校校長

青柳正美

Aoyagi Masami

教職歴38年目。下妻第一高校に赴任して2年目。「何事にも誠意を持って対応。知・徳・体のバランスの取れた人材の育成」

堀口博

▲茨城県立下妻第一高校

堀口博

Horiguchi Hiroshi

教職歴33年目。下妻第一高校に赴任して8年目。1学年主任。「大きな可能性を秘めている生徒に、基本を身につけさせたい」

小山茂

▲茨城県立下妻第一高校

小山茂

Koyama Shigeru

教職歴28年目。下妻第一高校に赴任して7年目。進路指導主事。「生徒が自分自身でする進路選択を側面から支援したい」

岩田隆

▲茨城県立下妻第一高校

岩田隆

Iwata Takashi

教職歴26年目。下妻第一高校赴任7年目。3学年主任。「最後に生徒によかったと思ってもらえるように精一杯取り組みたい」

瀬端正男

▲茨城県立下妻第一高校

瀬端正男

Sebata Masao

教職歴22年目。下妻第一高校に赴任して6年目。2学年主任。「誠実に生徒に接し、できる限り可能性を引き出したい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 1/14  次ページ

指導変革の軌跡72


茨城県立 下妻第一高校「進学実績の向上」

ガラス張りの情報共有で指導法を年々グレードアップ

● 実践のポイント
模試分析から面談までのプロセスや課外などの指導システムを確立
システムに学年ごとの新たな工夫を加え、生徒の実態に合ったものに改善
校内サーバーを活用し、全教師による情報共有を図る

「国公立大現役100名」と数値目標を明確化

 2006年春――。茨城県立下妻第一高校の国公立大現役合格者は、123名に達した。100名の大台を超えるのは4年連続だ。「国公立大現役合格100名」という目標を達成でき、進路指導主事の小山茂先生(当時3学年主任)は「正直、ほっとしました」と心境を打ち明ける。

 「数値目標を掲げると、教師はもちろん、生徒や保護者にもインパクトがあります。当然、学年主任にはかなりのプレッシャーがかかります。しかし、あくまでも生徒が第1志望校に合格することが指導の基本。生徒が目標に向けて努力し、教師がしっかりと支援した結果として、最終的に100名という目標達成につながればいいと考えていました」

 下妻第一高校で初めて国公立大現役合格者が100名を突破したのは、03年のこと(図1)。以来「100」という数値が暗黙の了解となっていたが、2年前、あえて明確な数値目標を打ち出した。瀬端正男先生(当時3学年担任)はこう振り返る。

 「学年団のベクトルを合わせるためには目標が大事だと思いました」

図1

 青柳正美校長も、「教師は生徒に『目標のない努力はない。目標があるから頑張れる』と話しています。それは教師も同じです」と、目標を明確化することの大切さを強調する。

 下妻第一高校は、旧制中学をルーツとする県内屈指の伝統校だ。元々「国公立大・現役志向」が強い土地柄でもある。生徒、保護者、そして地域のニーズが、結果としての100名という数値に集約されている。

 そんな下妻第一高校でも、大学進学実績が低迷した時期があった。00年、01年と連続して、国公立大現役合格者数が50名台に落ち込んだのだ。

 私立高校の台頭にも危機感を募らせていた下妻第一高校は、全校体制での学習指導、模試分析から面談までの流れのシステム化、進路指導と両輪である生活指導の徹底などを実践してきた(本誌03年10月号参照)。例えば、模試の分析結果を基に開かれる進学検討会には、学年団の全教師が参加。1学年約280名の生徒一人ひとりのデータを分析し、面談の資料を作成していった。こうして地道に築き上げてきた成果が近年、数値となって着実に花開いている。

 「指導の流れがシステム化しているので、初めて進学校に赴任してきた教師でも、スムーズに指導ができます。また、これらの指導システムが形骸化せず、機能し続けているのは、形だけでなく、意義も含めて全教師に共有されているからだと思います」(3学年主任・岩田隆先生)


  PAGE 1/14  次ページ