指導変革の軌跡 広島県立世羅高校「学力向上」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「世羅塾」を中心とした密度の濃い補習を展開

 体制の改革と並行して、学力・進路意識向上のための取り組みも次々と始めた。国英を中心とした添削指導、小論文・面接指導、進路指導部による面接、校内実力模試の実施……。「できることは何でも取り入れた」と進路指導主事の水野仁先生は述べる。

 中でも補習授業の充実には力を入れた。従来、世羅高校では大学進学希望者の大半が推薦入試を希望していたため、学年全体での補習は行っていなかった。それを02年度からは、全学年の大学進学希望者を対象に、放課後や長期休暇中に補習を行った。原則として希望者のみだが、学科試験が必要な進学希望者はほぼ全員参加している。生徒の進学意欲の高まりと共に、補習時間は年々伸びていった。当初は1日1時間程度だったが、今では5教科で3時間ほど行い、昼休みには現代社会の20分間の補習も実施している。

 夏期補習は日曜日を除くほぼ毎日、8時30分から18時まで行う。山場は、お盆前の3日間に行う「世羅塾」だ。以前この時期に行っていた2泊3日の学習合宿を改め、通い合宿として校内で補習を行うことにした。

 「学習合宿は費用がかかるため、参加者もそれほど多くはなく、慣れない外泊に、毎年体調を崩す生徒も少なくありませんでした。そこで、校内に食堂ができ、冷暖房が完備されたのをきっかけに、宿泊せずに、校内で朝から晩まで補習を行う形式に改めたのです。できるだけ多くの生徒に参加してもらうためにも、宿泊にこだわらない方が得策と考えました。特進クラスの生徒は全員、それ以外のクラスでも国公立大を志望する生徒はほとんど(約90名)が参加しています」(水野先生)

 時間割は、2度の休憩を挟んで、8時30分から22時近くまでびっしり決められている(図1)。生徒は自分に必要な教科・科目に申し込み、その時間以外は自習となる。そのため1限目に英語、昼の4限目に国語、最後の8限目に数学と、受講者の多い教科を要所に配置。生徒を途中で下校させないようにした。06年度には新たな策を仕掛けた。進路指導部の渡辺佳子先生は次のように話す。

 「自習室では特進クラスと普通クラスの生徒が混ざり合うように、教師が生徒の座席を決めました。特進クラスの頑張りが、普通クラスの生徒に良い意味での緊張感を与えてくれると期待したのです。実際、学力の高い生徒がわからない生徒に教えたり、夜遅くまで励まし合って勉強したりする中で、受験は集団で頑張るんだという雰囲気をつくれました」

 厳しい3日間は、生徒同士だけでなく生徒と教師の絆も深める。「これほど勉強できる高校生は全国にもそうはいない。自信を持ちなさい」という先生の言葉に、涙を浮かべる生徒もいたという。

図1

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