中学校での読解力向上に関する取り組みを見ても、これらの傾向は顕著に表れています。例えば、7ページで紹介している千葉市立磯辺第二中学校では、教師全員がPISA調査の問題を解いてみて、コンセンサスを得た上で、朝学習で行うPISA型読解力を問う問題を、教師全員の持ち回りで作成しています。更に、定期テストでは主要5教科以外に技術・家庭、保健体育でもPISA型の出題をしています。また、解答は短くても必ず文章にして提出させ、後日見直して、考えを深める機会を設けています。
中学校での指導法を見ると、2タイプに大別できます。一つは「技能型」です。各教科で養成したい読解力を抽出し、それを教師全員で整理して、各教科のカリキュラムと関連付けて指導するという方法です。読解力を系統立てて育成することができます。
もう一つは「日常型」です。磯辺第二中学校では、毎朝、PISA型の問題に取り組ませています。情報を読み取って伝えるという行為に慣れさせ、普通のこととしてできるようにするためです。PISAの調査では無解答率の高さにも注目が集まりましたが、磯辺第二中学校ではこの取り組みを始めたあと、定期テストでの無解答が減ったといいます。学習意欲の低さの問題にも、PISA型読解力の育成は効果があるのかもしれません。
中学校の指導は、少しずつですが変わってきています。その根底には、社会で活躍できる力を育成しようという理念があります。大学入試でもAO入試や小論文などで、自分の意見を相手に伝える力などが重視されるようになっていますが、卒業後、社会に出てから求められる力の素養を見ているにすぎません。小・中・高校、そして大学と、発達段階によって方法は異なっても、生徒たちが社会で生きる力を育てるという同じベクトルで指導を積み重ねていくことが、求められているのではないでしょうか。
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