特集 変わる高校入試・中学校の指導


◎千葉市立磯辺第二中学校

2005年度より千葉市「学習指導」の研究指定校、並びに文部科学省・学力向上拠点形成事業推進校の指定を受け、「総合読解力」の研究をスタート。生徒が出身小学校を訪れて、本の読み聞かせを行うなど、小中連携にも力を注ぐ。

設立●1984(昭和59)年

校長●吉田直孝

生徒数 ● 256名

学級数 ● 9学級


VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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【変化する中学校教育・実践事例】


千葉県千葉市立磯辺第二中学校

PISA型読解力を念頭に置いて総合的な読解力を育成

千葉市立磯辺第二中学校では2年前から、
毎朝、始業前の10分間を総合読解力の学習に充てている。
PISA型読解力の育成を念頭に置いたその取り組みをレポートする。

毎朝10分間を使って「総合読解力」を育成

 静かな教室に鉛筆を走らせる音が響く。生徒が取り組むのは問題例1のような、一筋縄ではいかない問題だ。しかし大半の生徒は戸惑うことなく、素早く答えを書いていく。

問題例1

 磯辺第二中学校では2年前から、PISA型読解力の育成を念頭に置いた「朝の総合読解」の時間を設けている。その内容は、高齢者に道案内をする設定で道順を文章化したり、放送劇のあらすじや感想を書いたり、上級生が下級生の教室で委員会活動の発表をしたり、と実に多彩だ。
 2005年度、千葉市の研究指定校に選ばれたのを機に「総合読解」の研究に着手したのは、PISA型読解力に関する危機感があったからだ。教務主任の弓北清孝先生が導入の経緯を説明する。
 「当時は03年に実施されたPISAの結果発表直後で、読解力の低さが問題視されていました。本校でも記述問題を苦手とする生徒が目立ち、非常に身近な問題に感じたのです」
 また、高校入試の問題が変化しつつあることも念頭にあった。研究主任で英語担当の山田信章先生は次のように指摘する。
 「例えば、英語の入試では、数年前から『自分の中学校の特徴を説明しなさい』『文章を読んで自分の意見を書きなさい』といった問題が出るようになりました。こうした問題には、従来の英作文の学習では対応できません。自分の意見を持ち、それを表現する能力の必要性を感じていました」
 こうした問題意識から、朝読書を行っていた始業前の10分間を、「総合読解力」の育成に充てることにした。総合読解力とは、PISA型読解力を踏まえて「読み取る力」「聴き取る力」「感じ取る力」「評価・分析する力」「書き伝える力」「話し伝える力」「表現する力」の総称だ。しかし、当初は教師の意識に開きがあり、「国語科を中心に進めるべき」という意見も目立った。
 「実体験した方が早いと、PISAの問題を教師全員に解いてもらいました。すると、国語科だけの問題ではないという認識が広まり、各教科から総合読解力にアプローチするコンセンサスを得られました」(山田先生)


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