指導変革の軌跡 神奈川県・私立桐光学園 中学校 ・高校「学校改革」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「大学訪問授業」で知的好奇心を喚起

 同校の特徴として定着した講習だが、これまで生徒のレベルや時代の変化に応じて形を変えてきた。開校当初は生徒の学力レベルの問題もあり、中学校の復習が主だった。それが進学実績の向上に伴い、高校の補習、大学進学に必要な講座と、段階的にレベルアップしている。
 01年から始めた土曜講習は、更に生徒の学習意欲を刺激している。教頭の村上冬樹先生は導入当時の状況を次のように述べる。
 「土曜講習は、完全学校週5日制への対応として始めました。当時、5日制にして7時間目を設けるか、65分授業を取り入れるか、あるいは6日制のままでいくか、校内で議論を重ねました。平日の授業時間を増やせば、自ずと講習は削られてしまいます。そこで、平日の時間割はそのままで、土曜日の講習を充実させることにしたのです。今まで積み上げてきた講習制度の効果の大きさを、教師全員が感じていたからです」
 土曜講習の増設によって、生徒の選択の幅は更に広がった。例えば、受講希望者の多い講習は、平日と土曜の両日で実施している。平日は部活動に専念したいという生徒は土曜の講習を受講し、大会などで土曜講習に参加できないときは平日に受講を切り替えるなど、選択がより自由にできるようになった。
 内容面でも、進路観を育成する取り組みや教養的な内容を盛り込む講座を取り入れた。土曜講習の4時間目は「ユニーク講習」と題し、「柔道入門」「はじめての囲碁」など、教師が自分の趣味や研究成果を生かして学ぶ楽しさを実感させる講座を開いている。また、「大学訪問授業」では、東京大、一橋大、早稲田大など延べ18大学から教員を招聘し、大学生や大学院生が何を学び研究しているのか、将来どのように社会に貢献するつもりなのかを語ってもらっている。
 「開校当時は、とにかく合格実績の向上が目標でした。しかし大学進学が当たり前となり、難関大の実績も上がってきた今、それだけで生徒の意欲を高めるのは難しい。知的好奇心を喚起したり、大学の先にある社会を見据えた授業を展開したりすることで、生徒の新たな可能性を開花させることも必要になってきています」(伊奈校長)
 実際、大学教員の模擬授業に触発されて、志望大を東京大から東京工業大に変更した生徒もいた。また、「最先端の研究現場では文系・理系を問わず幅広い知識が必要だ」・・そんな大学教員の講話を聞いた文系志望の生徒が、理系科目にもしっかり取り組み始めた例もある。
 講習の充実に伴い、通塾率も低くなっている。講習は、進学への意欲ばかりでなく、学校の求心力をも高めているのである。

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