指導変革の軌跡 神奈川県・私立桐光学園 中学校 ・高校「学校改革」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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大胆なコース改革で「中だるみ」を解消

 ほかにも、別学の女子クラスの設置など、数々の改革を行ってきた桐光学園中学校・高校。03年にはコース改革を断行し、学校として国公立大志向を鮮明にした。その背景には、不況による国公立大志望者の増加、そして1年生の中だるみ問題があった。
 02年度、順調だった進学実績が一時低下した。過去の模試データを検証したところ、高1の7月から11月にかけての落ち込みが大きく、高2の7月まで続いていたことがわかった。それが高3まで尾を引き、入試に対する準備の遅れにつながっていたのだ。この中だるみの原因はクラス編成にあったと、伊奈校長は振り返る。
 「本校は、高1進級時に国公立大を目指す理数科と、私立大を目指す普通科に分かれ、3年間固定したままでした。中高一貫の生徒は、中3までは上位クラスの理数科を目指して頑張りますが、高1でクラスが決まると、理数科に入った生徒は安心して勉強がおろそかになり、普通科の生徒は落胆して意欲を失う傾向が見られたのです。この傾向は高入生も同様でした」
 そこで、03年度から理数科を廃止して、普通科に一本化。高1進級時には成績上位者のためのSAコース、その他のAコースに分けた。そして、高1時の成績に応じて、高2進級時には国公立大向けの文Ⅰ・理Ⅰコース、私立大向けの文Ⅱ・理Ⅱコースに振り分けるというシステムにした(図3)。更に文Ⅰ・理Ⅰコースには最難関大を目指す選抜クラスを設けた。

図3

 「コースは成績によって決まります。1年の成績がかかわってくるので、高1後半に学習意欲を落とさず、高2に進級することを狙いました。SAコースの生徒もAコースの生徒も個々に目標を持ち、学習に取り組めるようになりました」(伊奈校長)
 SAコース・Aコースはいずれも従来の理数科のカリキュラムと同じであるため、コース改革に際しての教師の負担は少なかった。しかし、「それでも生徒は上を目指したいと思うもの」と伊奈校長。生徒に目標を与え続け、モチベーションを途切れさせないことが大切なのだ。
 コース改革の効果は早くも3年後に表れた。冒頭で述べた、06年度入試の国公立大合格者の飛躍的な増加は、まさに改革1期生の成果である。
 進路実績だけではなく、生徒の意識にも変化が表れた。村上教頭は「以前なら国公立大を狙えなかった学力層の生徒たちが、最後まであきらめず5教科に取り組むようになりました。先輩の実績が学習意欲につながっているのでしょう」と指摘する。
 最も大きな変化は、卒業生の多くが母校に対して「誇り」を持つようになったことだ。
 「かつての卒業生には学校に対する引け目のようなものがありましたが、近年の卒業生の言動からは学校に対する満足感を感じます。卒業生の来校回数が増えているのも、より多くの卒業生が母校に対して誇りを持つようになったからではないでしょうか」(中野先生)
 この「誇り」こそが、桐光学園の次なる飛躍の原動力になるかもしれない。

03年から生徒による授業評価を実施

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