2002年11月、望月高校の職員会は重苦しい雰囲気に包まれた。
「ついにここまで落ちたか……」
地元・望月中学校から同校への進学率は、例年30%を超えていたが、03年度高校入試でなんと20%を切ったのだ。地域の高校でありながら、地元の生徒が来ない。この現実に、教師は嘆息を漏らした。
原因は明らかだった。平日の昼間にもかかわらず、生徒が学校の近隣を歩き回り、校舎の裏はタバコの吸い殻だらけ。教室にはペットボトルが散乱していた。教師がいくら注意しても、生徒たちは耳を傾けない。そんな状況が10年近くも続いていたのだ。
だが、原因はそれだけではなかった。当時1学年主任だった大田一昭先生は、次のように振り返る。
「望月高校に進学しても、大学には進学できない。進路指導に対するそうした評価が、中学生を本校から更に遠ざけていたのです。大学進学者は例年4、5名いましたが、教師の個別対応。学校全体で大学進学を支援する体制がなかったのです。授業や進路指導の在り方を、抜本的に見直す必要に迫られていました」
望月高校は、03年度、まず授業の改善に着手した。わかる授業、規律ある授業を目指し、「授業についての確認事項」(図1)を作成するなど、教師全員が同じベクトルで指導する体制を整えた。同時にコース制の導入も決め、04年度より進学、福祉、ビジネス、体育の4コースを設置することにした。
学習指導も抜本的に改めた。その一つは、補習の充実である。
「それまでは、大学進学を希望する生徒も少なければ、生徒を大学に行かせたいと思う教師もほとんどいませんでした。成績下位層にしか対応していなかった補習を、大学進学を目指す生徒にも対応できるように変えました」(大田先生)
進学校での経験を基に、学習合宿や全員での大学見学会など、1年次から進路意識を高める取り組みも始め、生徒と教師の進学熱も徐々に高まっていった。その結果、早くも04年度入試で、諏訪東京理科大4名を含む4年制大に20名、公立の長野県短大2名を含む短大に9名が合格し、これまでにない実績を上げたのだ。
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