指導変革の軌跡 長野県望月高校「授業改革」
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「学びの共同体」で学び合う姿勢を育む

 プラットホームの理論的支柱は、東京大の佐藤学教授が提唱する「学びの共同体」だ。「学び続ける限り生徒は崩れない」という考え方の下、学校を子どもたちの「学び合いの場」にするのが最大の狙いだ。
 05年3月、プラットホームの支援により、教師たちは「学びの共同体」の先進校である静岡県富士市立岳陽中学校を視察。そこでは、初めて見る授業スタイルに圧倒された。机といすは「コの字」型に置き換えられ、教師の指示一つで生徒は4、5名のグループをつくって教え合いながら学習に取り組む。教師が一方的に教えることはなく、質問した生徒にも、まずは隣の生徒に聞くことを勧める。教卓はなく、教師はグループの間を巡回しながら、生徒の活動を見守る。
 「これこそが学びだ」。視察に参加した教師はそう思った。プラットホームが主催する講習に積極的に参加し、校内でも佐藤教授の著書やDVDを基に勉強会を重ね、「学びの共同体」の手法を授業に取り入れた。
 「1時間に1回はグループで学び合う時間を取り、生徒に話し合わせると、とにかく生徒がいきいきしてきます。生徒同士が教え合い、元気な顔で言葉を交わす光景は、これまでの一方通行の授業では決して見られませんでした。グループで学び合う中で、学びに対する意欲が喚起されたのだと思います」(臼田先生)
 「学びの共同体」のもう一つの特徴は、教師自身も互いに学び合うことだ。教師全員が互いの授業を公開し合い、きちんと生徒を支援できているか、生徒はしっかり授業に集中しているかなどを話し合う。
 05年度は、全教科で10回以上の授業研究会を行った。授業を撮影したビデオを20分程度に編集して、教師全員が集まり、それを見ながら自由に意見を言い合う。撮影するのは、教師の様子ではなく生徒の表情だ。
 「教師は授業の進行に気を取られ、生徒の様子を見ていないことが多い。ビデオによって、ある生徒は授業中ずっと下を向いていた、別の生徒は授業態度が不まじめなようでも、要点はしっかり押さえていたことなどがわかりました」(大田先生)
 05年度の改革以来、生徒は前向きな学習態度を身につけつつあった。「学びの共同体」の取り組みは、そうした学習意欲を更に高める役割を果たした。どの教室でも生徒同士が学び合い、支え合う風景が見られるようになった。その姿を見た佐藤教授が「第一級の生徒」と呼ぶほどだった。

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写真 教室のあちこちで、教え合う風景が見られるのは「学びの共同体」の成果。「わからない」という生徒が1人でもいれば、すぐに近くの複数の生徒が教える習慣が身についている。

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