こうした学力調査を実施するときには、大きく四つのことに留意する必要があります。
一つめは調査の対象や調査の方法を複数にすること。生徒だけ、教師だけに絞った調査を行うのではなく、生徒、教師、第三者からデータを収集します。ここで言う第三者には、GTECのような標準テストも含まれますし、研究者等による第三者評価も含まれます。また調査方法も、生徒や教師による自己申告だけではなく、研究者や同僚が、教師の授業や生徒の学習行動、言語パフォーマンスを実際に見るという直接的観察も必要になります。
教師に対する調査と生徒に対する調査を組み合わせることによって、教師がどのような狙いで授業を行っており、それを生徒がどう受け止めているか、教師と生徒間の相互作用が明らかになります。また自己申告と直接的観察を組み合わせることによって、例えば「プロダクション活動」を重視していると答えた教師の授業が、本当に狙い通りの授業になっているかを分析することができます。
二つめの留意点ですが、指導内容や生徒の学力は学校によってさまざまであるため、「SELHi校だから」「一般校だから」と一括りにできない面があります。そこで、何らかの指標でグループ分けをしてサブグループをつくり、サブグループごとに調査対象校を抽出していく必要があります。
三つめは、調査目的と調査項目の合致です。調査目的が「知識としての英語力が身に付いているか」ということであれば、それを測るための指標は模試のデータで良いでしょう。しかし、今回の調査では、文部科学省による「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」の一環として行われているSELHi事業の成果を調べることが目的ですから、GTECや教師や生徒への意識調査やCAN・DO調査(※)が用いられたわけです。
四つめは、継続的な調査が重要であるということ。教師の指導や生徒の学力の推移を見るためには、同一調査対象者への長期的追跡調査が必要になります。
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