SELHi指定校レポート 北海道



北海道函館中部高校
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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1クラス3グループ展開で全員が楽しく活動できる授業に

ようにと考え出されたのが、「3‐Station System」(図1)だ。これは、1回の授業を三つのステーションに分け、1クラス約40名を3グループにして、各ステーションをローテーションしながら学ぶというもの。各ステーションは次のような位置付けとなる。
(1)インプット…語彙、文法、構造を学ぶ
(2)コミュニケーション(インテイク)…インプットしたことを内面化する
(3)アウトプット…内面化したものを使う
  この三つのステーションは語学を学ぶ際にたどる流れであり、学習方法を変えながら同じ表現を繰り返し学べるため、知識として定着しやすい。ただ、3グループが同時進行となるため、いきなりコミュニケーションやアウトプットから始まるグループも出てくる。そこで、授業の最初にその日の学習概要を伝える時間を5分設け、更に最初のステーションを毎回変えることで不公平さをなくした。

図1

  「公開授業でこの手法を体験した他校の先生から、どのステーションから始めても違和感がなかったという感想をいただきました。日本語もそうですが、語学学習は文法から順序をたどって学ぶだけでは十分ではなく、実際に使って試行錯誤をしながら学習するもの。それを体現しているのがこの手法です」(伊藤都章先生)
  一つのステーションは15分間で、生徒はステーションごとに教室を移動する。一見慌ただしそうだが、よい気分転換となり、生徒はかえって活動に集中できるという。また、三つのステーションは、3人のAETが分担する。出身地はアメリカ、イギリス、オーストリアなどと多様で、生徒は同じ英語でも国が違えば発音や言い回しが異なることを、肌で感じ取れる。
  「授業を重ねるごとに、生徒に間違いを意識せず、どんどん英語で表現しようとする姿勢が見えてきました。年度末の調査でも『英語を話すのが楽しくなった』『もっと英語を上手に話せるようになりたい』という英語学習に対する肯定的な回答が目立ちました」(今井先生)
  OCIは、1学年全クラスが同じ指導案で授業を行う。指導案は、教師とAETらで学習表現を決めたあと、AETが担当ステーション分を考え、事前に伊藤先生が内容をチェックして、すり合わせている。
  「文法などを丁寧に教えるのが得意なAET、映画をうまく教材にして生徒を引き付けるAETと、教え方にも個性があります。AETに任せれば一生懸命考えて授業をしてくれます。それらをまとめ上げるのが、私の仕事だと思っています」(伊藤先生)
  指導案は1人が15分間の一つのステーション分をつくればよいので、準備に時間がかからず、内容の充実を図れる。更に、6クラス全部で同じ指導案を使うため、授業を平準化でき、次の授業改善にすぐ生かせるという利点もある。
  「教える側は6クラス×3グループと18回も同じ授業を繰り返しますが、生徒の反応はグループごとに異なり、一つとして同じ授業にはなりません。臨機応変な対応が求められ、指導力の向上にもつながっています」(今井先生)
  生徒だけでなく、教師にも多様な効果のある「3‐Station System」だが、進めるうちにデメリットも分かってきた。活動時間が15分と短いため、ディスカッションなどじっくり取り組みたい活動には適していなかったのだ。生徒の英語力が順調に伸びるに連れ、生徒からもより高度な英語を学びたいという要望が聞かれるようになった。
  そこで、04年度はこのシステムの発展型として「Division System」(図2)を取り入れた。これは、1クラスを二つのステーションに分け、英語活動のステーションは更に2グループの少人数に分ける方法。これなら一つのステーションに20~25分確保できる。

図2

  「ディスカッションやディベートといった時間のかかる取り組みができ、内容も深化させることができました。ただ、英語力が培われていない時期には3ステップで学べる『3‐Station System』の方が適していたので、05年度はこの二つを活動内容によって使い分けることにしました」(今井先生)
  更に、英語Iのトピックや語彙などをOCIに意図的に取り入れ、科目間の連携も強化。同じ表現を繰り返し登場させることで、生徒の関心を引き付け、知識の定着を図っている。
  「この二つのシステムは一見実施が難しいように見えますが、クラス再編成の必要がなく、一つの指導案で1学年分の授業ができるので、普通科の高校でも導入しやすい方法なのではないでしょうか」(伊藤先生)


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