SELHi指定校レポート 北海道



北海道函館中部高校

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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一つのパラグラフの構成を徹底的に理解させる

 二つめの柱となるライティングは、2年次に文系クラス週3時間、理系クラス週2時間ある。うち1時間は自由英作文をメインとした授業だ。1クラスを習熟度別の3グループに分け、AETと日本人教師がチーム・ティーチングを行う。身近なテーマ(図3)でエッセイを書き、AETが添削して、翌週生徒に返す。年度末に『CHUBU JOURNAL』という英字新聞を生徒一人ひとりでつくることが最終目標となっている(写真)。


図3

写真
「CHUBU JOURNAL」は、生徒自身がテーマを決め、内容を調べて作成する。

  指導の重点は、一つのパラグラフの構成をしっかりと理解して、定着させることだ。一つのパラグラフで、時間順、重要順、空間順などのロジックを意識して書けるように学校独自の教材をつくって指導している。また、「何を書けばいいか分からない」ということがないよう、テーマは身近なものとし、テーマに対するアイディアを生み出す方法として、ブレーンストーミングによる考えの整理法を指導。その上で、複数のパラグラフを組み合わせた論理的な構成で書けるよう、段階を追って指導している。
  実は、AETによる添削指導は01年度から始めていたが、GTECなどでは思ったような成果は表れなかった。そこで、SELHiをきっかけに知り合った外国語学校の外国人教師に相談すると、意外な答えが返ってきた。
  「英語が母国語の子どもでも、まずは一つのパラグラフの書き方をきちんと勉強するというのです。私たちは、複数のパラグラフを組み合わせた全体の書き方は教えていても、一つのパラグラフの書き方を意識して指導していませんでした」(今井先生)
  このアドバイスをきっかけに現在の指導法へと変えたことで、GTECのライティングの平均スコアは前年度より15ポイントもアップし、生徒の英語力は一気に伸びた。
  「近年、入試で自由英作文を出題する大学は増加しています。そうした観点からも、相手に伝わる論理的な英作文を書く力を身に付けることは重要と捉えています」(今井先生)
  OCI、ライティング共に指導のポイントとなっているのは、AETと協働態勢をつくり上げている点だ。一緒に指導法を考え、お互いの授業を見てアドバイスをし合い、指導法の改善に生かしている。こうしたAETとのコミュニケーションは、教師自身の英語力向上にもつながると今井先生は強調する。
  「AETとの会話はすべて英語です。更に、他の先生やAET同士の会話を聞いて、私自身の聞く力や表現力を磨く場としています」
  また、OCIとライティングは学年共通の授業としているが、英語I・IIは各教師に任せている。教師それぞれに積み重ねてきた指導法があり、それを生かしていきたいと考えるからだ。
  「いきなりすべての指導を変えることはできません。キーとなる授業を変えることから始め、日本人教師もAETもそれぞれの経験を生かしながら、協力していくことが大切なのではないでしょうか」(伊藤先生)
  05年度は北海道函館中部高校のSELHiの最終年度に当たるが、「本校の取り組みの成果は、進研模試の成績にも表れています。05年度の1、2年生の英語はここ数年で一番の出来でした」と今井先生は話し、今後の展開にも期待を込めている。
  「SELHi指定校となって良かった点の一つは、公開授業などを通して他県の英語の先生とのネットワークができたことです。05年度には、他校の実践を参考に英語ⅠとⅡの一部のクラスで音読・暗写を取り入れました。これからもより良い指導法はどんどん取り入れていきたいですし、私たちも実践結果を積極的に発信していきたいと思います」


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