SELHi指定校レポート 京都府 私立立命館宇治高校
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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普通コースで実践される“内容重視”の英語教育

 英語を通して教科学習を受けているうちに、自然に英語も身に付いていく。そうしたイマージョンプログラムの理念は、普通コースにも「Content-based Teaching(内容重視の教授法)」として生かされている。
  これは、立命館宇治高校がSELHi研究の一環として取り組む授業法で、その趣旨は英語の授業において、生徒の関心が高く、また新たな知識が得られるテーマを教材に選ぶことで学習に広がりを持たせようというものだ。そのため、大学レベルの難易度で、ビジネスやライフスタイル、トレンドなど、高校生も関心を抱きそうな題材が充実したテキストを使用している(図2)。
  「テキスト選びには試行錯誤し、生徒や教師の反応を確かめながら何度か変更した経緯があります。授業はネイティブ教師と日本人の教師が並行して進めています。日本人教師はテキストを使って文法事項などの定着を図り、ネイティブの教師は日本人教師が教えたトピックやスキル、文法事項を使って独自に開発した教材を基に授業するというスタイルです」(外国語科主任・中原有美乃先生)

図2


  更に、立命館宇治高校が重視しているのは、ネイティブの教師と日本人の教師の役割分担だ。現在は、文法や精読の学習は日本人の教師が担当している。どうしても生徒が理解できないときは、日本語で説明した方が効率的と判断したからだ。また、リスニングやリーディングといった“インプット”は日本人、ライティングやスピーキングといった“アウトプット”の指導はネイティブが中心に行う。
  「週5時間のうちの3時間はネイティブの教師、2時間は日本人の教師が、テキストの同じページに関して別の角度から指導し、学習を深化させています。授業にメリハリも出て、その時間で何を学ぶべきかが生徒にとって理解しやすくなったようです」
  更に、中原先生は、英語の授業ではインプットに対して、必ずアウトプットの機会を設けることの重要性を強調する。
  「何らかのテーマを学習したら、必ず、自分の経験に置き換えさせるなどし、それを授業中に発表させるようにしています。それによって、学習への意欲は大きく変わります。1年次は暗唱大会、2年次はスピーチコンテスト、3年次は海外への研修旅行など、学習の成果を発揮する場を設けていることも、同様に学習への大きな動機付けになっています」
  普通コースの英語教育でも、SELコースと同様に、明確な学習目標が設けられている(図3)。また、全員がTOEFLを受検。500点以上の高スコアを上げる生徒も少なくないという。中原先生は、これらを目指す過程で、自分を表現し、他者を理解する人間性も培ってほしいと話す。
  「英語を通していろいろな人を理解し、自分と異なると思った人にも寛容になってほしい。困っている人がいれば手を差し伸べる優しさを持ってほしい。それが英語を学ぶ一番の目的だと思っています。そうした人材を育てるために、今後も研究を充実させていきたいですね」

図3
写真
英語の授業は1クラス20名を基準として、少人数で編成。到達度に応じて4段階の授業を設けている。

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