SELHi指定校レポート 高知県 高知県立高知西高校
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 21/29 前ページ   次ページ

「和訳先渡し」「教科書再利用」で多量の英語を浴びせる

 まず1年次では、多量の英語を浴びせて、同じ事項を繰り返し指導することで、英語に慣れさせることに重点を置いた。そのために導入したのが、「和訳先渡し」と「教科書再利用」だ。
  「和訳先渡し」は「増量コア・プログラム」の「総合英語」で取り入れた。標準的な授業展開としては、1時間目に該当レッスンの和訳を配付して語彙や概要を把握させ、2時間目は音読を中心に活動し、音声として表現の定着を図る。そして、3時間目にはリテリングなどのアウトプットを行い、学習した表現を実際に使えるようにしている(図2)。この方法では、和訳に時間がかからず、従来5~7時間かかっていた1レッスンがわずか3時間で終わる。1年間で高1と高2レベルの教科書、文法テキストの計3冊を終了するため、それまでの3倍以上の英語に触れることができるのだ。

図2


  事前に和訳を渡されると、生徒は勉強しなくなるのではないかという疑問に対し、山田先生は次のように説明する。
  「和訳先渡しの目的は、訳読に費やす時間を減らし、浮いた時間で英語そのものを使った活動を増やすことですので、次の授業のためには復習が欠かせません。むしろ生徒の学習量は増えています。また、和訳先渡しによる余剰時間をどのように使うかが、重要なポイントです」
  「教科書再利用」は、「スキル養成プログラム」の学校設定科目「パワー・イングリッシュ(以下PE)」で行っている。この授業では、シャドーイングなどのアウトプット活動を繰り返すことに重点を置いているが、かつて使用した教科書を再び教材とすることで、英文の理解に時間をかけず、英語の実践力養成の時間を十分に取れるようにしている。1年次前期で中学の教科書を教材としているのも、中学レベルの英語なら聞き取ったり話したりすることはできなくても、読んで内容を理解することはできるからだ。
  「高校英語のベースとなる中学英語を、まずは完全にマスターさせる必要性を感じました。実際、生徒に中学レベルの英語を聞かせても、正確には聞き取れていません。そこで、『このレベルの英語が自由自在に使えるようになれば、海外で暮らせるよ』と説明します。これには説得力があるようで、生徒は中学の教科書の再学習の意義を納得してくれます」(山田先生)
  1年次のPEⅠ・IIは、英語科40名の生徒を10名ずつのグループに分け、4名の教師が同じ指導案を基に授業を進める。教材は、前期のPEⅠでは中学の教科書、後期のPEIIでは前期の「総合英語」で使った教科書を再利用している(前ページ図1)。授業は週4時間あり、1週間で1レッスンを終了できるようにした。標準的な授業展開は、45分の授業を生徒が使う技能やスキルに配慮し、(1)語彙確認・定着と内容理解の活動 (2)スピーキング・リスニングを中心に他者とのコミュニケーションを図る活動 (3)音声と活字をすり合わせる音読筆写・ディクテーション活動の三つのフェーズに分け、授業の最初・フェーズ間・授業の最後に、短いシャドーイングを実施している(図3)。
  「PEは、英語の運用技能を高めるというトレーニングの目的が明確な上に、成果も実感できます。既に学習して内容を理解している教科書のパターン化したトレーニングでも、生徒は楽しんでいるようです」(山田先生)
  「和訳先渡し」と「教科書再利用」により内容理解の時間を圧縮し、余剰時間を利用して多量に英語のシャワーを浴び続けた結果、生徒の語彙は自然と増えていった。
  「2年次の「英語理解」では、高3レベルの教科書を使いましたが、読みやすいものを使ったこともあってか、和訳はもう必要ありませんでした」(山田先生)

図3

  PAGE 21/29 前ページ  次ページ