特集 受け身から主体的な学習に向けて
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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生徒も保護者も進路意識が安全志向に

耳塚 成績上位の高校ではできるだけ高い進路を希望する一方、中・下位層の多い高校ではほどほどの大学で満足する生徒が増えています。生徒の進路意識の変化について気づかれている点はありますか。

 

飯島 「東京大に行ける実力があっても指定校制推薦入試で私立大に行きたがる生徒がいる」という話は、進学校でもよく聞きます。基本的に今の生徒は、成績にかかわらず安全志向に走る傾向にあるようです。本校でも、安易な選択をしたがる生徒に高い目標を持たせて、何とか引っ張り上げている状態です。

 

赤藤 本校は地域の3、4番手の進学校ということもあり、自信が持てない生徒が少なくありません。生徒が自信を持って高い目標に挑戦できるよう、生徒が輝いている瞬間を見つけては褒めることを、教師全員で心がけています。ただし、近年は、生徒以上に保護者が安全志向になっている気がします。生徒は頑張ろうと思っているのに、保護者が早く安心感を得たいために、指定校制推薦入試で決めようとする。子どもを手元に置いておきたいという思いも強く、他県の大学に行かせることに対して、躊躇する保護者も多いですね。

 

渡辺 情報に影響されやすいことも、最近の生徒の特徴だと思います。たった一度の講演を聴いただけで学部・学科を決めたり、それまで十分に考えていたはずの志望を安易に変更したりする。本校では2年次の6~9月に学部・学科研究、進路研究を実施し、10月末に一人ひとりに、A4で2枚ずつレポートを提出させていますが、将来の自分の姿を踏まえた進路選択ができている生徒は少ない。生徒には多すぎるくらいの情報を与えて、さまざまな選択肢があることをわからせ、その中から選ぶように指導しています。

 

耳塚 最近は大学でも、入学後間もなく、他学科の授業を一度聞いただけで転学科したいという希望を述べる学生がいます。生徒には「いつでもリセットできる」という意識があるのかもしれません。生徒たちの進路意識を高める上で、どのような取り組みをされているのですか。

 

飯島 本校では、2年次の6月に「総合的な学習の時間」で在卒懇談会を開いています。卒業生25名ほどに大学生活や高校生活の送り方について話してもらいます。更に、3月には、大学に合格したばかりの3年生に具体的な受験勉強の方法を話してもらいます。受験に向けて本格的にスタートする時期ですので、生徒にはよい刺激になります。

 

渡辺 先輩の姿を見せることは、生徒の気持ちを高める上で有効だと思います。高い志を実現させた先輩たちの存在は、「自分もやればできる」という自信につながります。実際、本校では、難関大に合格した先輩が増えたことで、生徒の難関大志向が高まっています。もっと積極的に先輩を活用する仕組みをつくることが必要かもしれません。


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