特集 受け身から主体的な学習に向けて
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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受動的な学習を踏まえ生徒の主体性を育む

耳塚 高い志望を実現させるためにも、生徒に自ら学ぶ姿勢を身につけさせることは大切です。しかし、今までのお話でも、そうした姿勢を育てるのは並大抵のことではないと思います。生徒に主体性を身につけさせるためには、どのような方策が必要だとお考えですか。

 

飯島 生徒に主体的に考えさせた方がよい場面でも、教師は「ここで教えたらすぐに学力が伸びる」と考え、つい手を出してしまいます。しかし、それで短期的な受験学力を身につけさせることができても、自ら考え解決できる力を身につけさせることにはつながりにくいでしょう。すべてを教えるのではなく、ときには生徒の試行錯誤を見守る姿勢を貫くことも必要なのだと思います。

 

渡辺 教師も安心感を得たいという思いから、生徒に指示してしまいがちです。しかし、受動的な学習は必ずしも悪いことではない、と思います。学問を修得する上でまず必要なのは、教師が言ったことをきちんと聞き、それを理解して、自分のものにできるかということです。そうした訓練をせずに独りよがりになってしまっても、生徒の力は伸びません。苦しくてもそうしたプロセスを経ることで、更に高い目標に向かう主体性を伸ばすことができるのではないでしょうか。

 

耳塚 きちんと話を聞く姿勢や基本的な学習習慣を身につけなければ、その先の知的な興味を追究することもできないということですね。

 

赤藤 私が担当する学年では、1年生から主体性を育てることを目標に指導に取り組んできました。主体性を身につけるということは、学習面だけでなく、生活のあらゆる場面で主体的に動けるようになることだと思います。そのため、2年生の夏までは学習習慣の定着や生活指導に関して徹底的に指導しましたが、9月以降は緩めています。週末課題なども、例えば小論文の練習を組み合わせるなど、生徒が自分の進路に合わせて選択できるように変えています。また、保護者の熱意も大きな力です。夏休みの課題に親子日記(注1)を提案したところ、保護者からの毎日のコメントでやる気に火がつき、成績を飛躍的に伸ばした生徒がいました。保護者の視点を通して自分の足りない部分を自覚したことが、生徒の主体性を高めたのかもしれません。

 

耳塚 社会学では、主体性とは他者が自分をどのように見ているのかを知り、それを元々ある自分自身のイメージと対比させることで初めて育つと考えられています。今の生徒には、自分を対象化して見つめる経験が必要なのでしょう。

 

飯島 褒める指導も自己効力を高め、主体性を伸ばす方策の一つだと思います。学校行事や部活動を含めたさまざまな場面において、まわりから評価されたという経験を通して、何かに積極的に打ち込む、あるいは人のために何かをしたいという気持ちが育つでしょう。

 

耳塚 受験という短期的な目標だけではなく、大学進学後、あるいは社会に出たあとに伸びるような力を育てることが大切ということですね。本日はありがとうございました。

注1:生徒と保護者が一体となって日々の学習に取り組むための日記形式の学習記録


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