特集 受け身から主体的な学習に向けて
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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隠れたカリキュラムの回復を社会全体で考えるとき

  主体的な学びへの姿勢は、かつての高校生なら入学前に自然と身につけているはずのものでした。それが、今の高校生には身につけづらくなっているということも、座談会を通して実感したことの一つです。
 以前は、学習の仕方など教わらなくても、子どもはどこかの段階でその方法を習得していました。わからないこと、興味のある事柄について自分で調べることも、学校で習うものではなく、何らかの体験の中から自然と学んでいました。本来、子どもが成長する過程のどこかに、そうした「隠れたカリキュラム」と呼べるものがあったのですが、今はそれが失われてしまっているのです。「隠れたカリキュラム」を回復することが、小中高を含めた学校現場の共通の課題なのかもしれません。
 しかし、何が「隠れたカリキュラム」なのかはわかりません。主体性が身につく過程には、幼少時の自然体験や家庭の躾なども大きくかかわります。学校だけではなく、家庭や地域を含めた大きな問題として捉えていかなければならないでしょう。今、あえて高校にできることを挙げるとすれば、知的好奇心を喚起する授業はその一つかもしれません。興味を持って取り組めるものが一つでも見つかれば、ほかのことにも前向きに取り組めるようになるものです。生徒の心を揺さぶる授業こそが、生徒の主体性を回復するための方策の一つになり得るのではないでしょうか。
 現状では、今の手厚い指導は必要でしょう。しかし、高校生活は子どもが「生徒」から「学生」へと人間的な成長を遂げる大切な時期です。生徒が独り立ちできるように、短期的な学力だけでなく、長期的な視野に立って将来大きく開花する力を身につけさせることも重要です。どうすれば生徒が主体的に学ぶ姿勢を身につけられるのか、社会全体で考えるときが来ていると思います。


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