特集 受け身から主体的な学習に向けて
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「在卒懇談会」で生徒の心に火をつける

 南多摩高校は、大半の生徒が大学へ進む。しかし、東京大などの最難関国立大を目指す生徒はわずか。首都圏では私立大の選択肢の幅が広いため、第1志望が難関私立大で、第2志望が東京学芸大や首都大学東京などの国公立大という生徒も少なくない。第2志望の方が第1志望より受験科目数が多いこともある。それだけに、受験対策も難しい面があるという。
 「こんなことをやっていても意味がないのでは?」「勉強の仕方を変えた方がよいのでは?」など、受験勉強を進めるにあたって、そんな不安と闘っている生徒が多いと飯島先生は打ち明ける。
 「生徒が安定した気持ちで勉強に向かえることが大切です。データに基づき、説得力のある形で『きみの勉強法なら頑張れば合格できる』というアドバイスを常に発信しなければなりません。単に学力を高める方法だけでなく、志望大を視野に入れた科目のバランスなど、総合的なアドバイスが必要です」(飯島先生)
 進路意識の醸成や学習に向かう動機付けには、「在卒懇談会」を活用している。2年生の6月と3月の年2回、それぞれ卒業生を25名ほど呼び、「人文系」「社会科学系」「理工系」「医療系」に分かれて懇談する。
 6月の在卒懇談会(図1)は、大学2、3年生を中心に、現在の大学生活を踏まえた上で、「高校時代にやってよかったこと」「やっておけばよかったと思うこと」などを話してもらう。今後の高校生活の参考にしてもらうのが狙いだ。
 3月には、大学受験を終えたばかりの3年生に、志望大に合格するための勉強法などを話してもらう。5教科それぞれの力の入れ具合など、具体的なエピソードによって、生徒に受験勉強をリアルにイメージさせることが狙いだ。
 かつて、同校の進路指導部会に参加していたのは、進路指導部の教師だけだった。しかし、3年ほど前からは各学年の進路担当者も加わっている。このため、学年間での情報共有も盛んになってきたと飯島先生は話す。
 「入学時点での平均偏差値を考えると、学力が真ん中くらいの生徒でもMARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)クラスを狙える位置です。1、2年のうちから『大学に受かるために頑張って勉強しろ』というだけの指導はしたくありませんが、教師の側にデータに裏付けされた目安がなければ適切な指導はできません。模試の結果や大学受験データなどの情報を更に活用して、生徒の意欲を引き出していきたいと考えています」

図1

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