時代の先を読み、社会や企業のニーズを見極める目を養うことは、工学系の研究者にとって大切です。
CDMAの成功を基に、次々と私は新しい技術を考察し、最近ではUWB(※2)という高速無線通信技術を生み出しました。今後、パソコンや携帯電話だけでなく、家電製品や医療機器など、あらゆる電気機器が無線でつながり、いつでもどこでも必要な情報をやりとりできるユビキタス(※3)社会が到来します。
この社会では、あらゆる機器が自ら状況を判断し、使う人間に便利な環境をつくってくれます。例えば、「カーナビが渋滞状況を把握した上で道案内をしてくれる」「品物を持って店を出れば、自動的に代金が引き落とされる」という環境が実現するわけです。
そうしたユビキタス社会を担うのが高速無線通信です。
ブロードバンド(広域帯)無線技術には米国企業が既に実用化したブルートゥース(※4)がありますが、私は当時だれも手をつけていなかったUWBこそがユビキタス社会の鍵を握ると考え、独自に研究。
アメリカでは、02年にUWBの商用化を認める法令が出され、一躍脚光を浴びることになりました。
ただ、私は技術を開発し、特許を取得するだけでは満足しませんでした。
多くの大学は、研究や開発をしても、開発した技術を産業として定着・発展させることは稀です。
しかし、工学は実用化してこそ意味がある学問です。私はUWBの商用化に向けて活動を始めました。
|