未来をつくる大学の研究室 情報通信工学
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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研究テーマは?
ユビキタス社会を担うUWBを研究

 時代の先を読み、社会や企業のニーズを見極める目を養うことは、工学系の研究者にとって大切です。 CDMAの成功を基に、次々と私は新しい技術を考察し、最近ではUWB(※2)という高速無線通信技術を生み出しました。今後、パソコンや携帯電話だけでなく、家電製品や医療機器など、あらゆる電気機器が無線でつながり、いつでもどこでも必要な情報をやりとりできるユビキタス(※3)社会が到来します。 この社会では、あらゆる機器が自ら状況を判断し、使う人間に便利な環境をつくってくれます。例えば、「カーナビが渋滞状況を把握した上で道案内をしてくれる」「品物を持って店を出れば、自動的に代金が引き落とされる」という環境が実現するわけです。 そうしたユビキタス社会を担うのが高速無線通信です。
 ブロードバンド(広域帯)無線技術には米国企業が既に実用化したブルートゥース(※4)がありますが、私は当時だれも手をつけていなかったUWBこそがユビキタス社会の鍵を握ると考え、独自に研究。 アメリカでは、02年にUWBの商用化を認める法令が出され、一躍脚光を浴びることになりました。 ただ、私は技術を開発し、特許を取得するだけでは満足しませんでした。 多くの大学は、研究や開発をしても、開発した技術を産業として定着・発展させることは稀です。 しかし、工学は実用化してこそ意味がある学問です。私はUWBの商用化に向けて活動を始めました。

用語解説
※2 UWB(Ultra Wide Band)  超広域帯通信の総称。従来の無線通信は、帯域幅が数MHz、比帯域幅1%程度であり、UWBはそれらと比べると極めて広い周波数帯域(7.5GHz)を利用する。消費電力が少なく、従来の無線通信よりもはるかに高速にデータをやりとりできる。無線通信だけでなく、位置測定やレーダーの機能を持つことも特徴。
※3 ユビキタス  ラテン語で「どこにでも神が存在し、意識せずに何でもしてくれる」という意味。 生活や社会の至る所にコンピュータが存在し、コンピュータ同士が自律的に連携して作動することにより、人間の生活をバックアップする情報環境。 既に実現しているものには、インターネットでレシピを検索しながら自動的に調理する電子オーブンレンジ、電子マネー機能付きの携帯電話、高速道路の自動料金収受システム(ETC)がある。
※4 ブルートゥース  エリクソン、IBM、インテル、ノキア、東芝の5社が中心に提唱する携帯情報機器向けの無線通信技術。 1Mbpsの速度でパソコンや携帯電話を無線でつなぎ音声やデータをやりとりできる。
写真1
写真1 研究室が考案した、人口知能の複素強化学習アルゴリズムを用いた電動車椅子。これは、乗り心地を学習し、障害物などを認知して走行する。
写真2
写真2 研究室で開発した等価飛躍理論を導入した、片足でジャンプするロボット。片足ジャンプの高さと飛躍距離の世界最高記録を出した。

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