無線技術の実用化には、標準化と法制化が必要です。優れた技術でも、電波法(※5)で定められたものしか商品化できません。
私は、情報通信研究機構(※6)と産学官連携UWBコンソーシアム(※7)を指導し、世界初「UWB無線PAN用CMOS―MMIC(※8)」という技術を開発し、さまざまな特許を取得しました。
更に、自ら座長を務める総務省の情報通信審議会(※9)でUWBの電波法の技術基準策定を主導し、06年、技術の法制化のための答申を得ることに成功しました。これにより、UWBの技術が国内で商用化される前提が整ったのです。
もう一つ大切な点は、技術の標準化です。メーカーの異なる携帯電話同士で話せるのは、通信方式が標準化されているからです。業界標準技術と認められれば、一気に普及します。
パソコンの業界標準であるウィンドウズが良い例です。ウィンドウズ搭載のパソコンが1台売れればマイクロソフト社にロイヤリティーが入るわけですから、ライセンス収入だけで莫大な利益を得られます。
情報技術分野では米国企業の後塵を拝することが多い日本ですが、無線通信分野で巻き返しを図れる可能性が出てきました。私は、無線通信分野の国際標準化交渉を主導し、ついにUWB無線PANの国際標準化に成功したのです。
ユビキタス社会となり、すべての電気機器が無線でつながるようになれば、UWBは一気に普及します。UWBコンソーシアム加盟企業はロイヤリティーフリーで使えますが、外国企業はロイヤリティーを払わなければ使えません。
今後、爆発的に普及する可能性を持った無線方式を、日本企業が優先的に活用できる道が開かれたのです。 |