未来をつくる大学の研究室 情報通信工学
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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教育方針と業績
独自に開発したUWBの標準化・法制化に成功

 無線技術の実用化には、標準化と法制化が必要です。優れた技術でも、電波法(※5)で定められたものしか商品化できません。
 私は、情報通信研究機構(※6)産学官連携UWBコンソーシアム(※7)を指導し、世界初「UWB無線PAN用CMOS―MMIC(※8)」という技術を開発し、さまざまな特許を取得しました。 更に、自ら座長を務める総務省の情報通信審議会(※9)でUWBの電波法の技術基準策定を主導し、06年、技術の法制化のための答申を得ることに成功しました。これにより、UWBの技術が国内で商用化される前提が整ったのです。
 もう一つ大切な点は、技術の標準化です。メーカーの異なる携帯電話同士で話せるのは、通信方式が標準化されているからです。業界標準技術と認められれば、一気に普及します。 パソコンの業界標準であるウィンドウズが良い例です。ウィンドウズ搭載のパソコンが1台売れればマイクロソフト社にロイヤリティーが入るわけですから、ライセンス収入だけで莫大な利益を得られます。
 情報技術分野では米国企業の後塵を拝することが多い日本ですが、無線通信分野で巻き返しを図れる可能性が出てきました。私は、無線通信分野の国際標準化交渉を主導し、ついにUWB無線PANの国際標準化に成功したのです。
 ユビキタス社会となり、すべての電気機器が無線でつながるようになれば、UWBは一気に普及します。UWBコンソーシアム加盟企業はロイヤリティーフリーで使えますが、外国企業はロイヤリティーを払わなければ使えません。 今後、爆発的に普及する可能性を持った無線方式を、日本企業が優先的に活用できる道が開かれたのです。

用語解説
※5 電波法  放送を含む各種の電波の公平な割り当てと、能率的な利用を図ることを目的とする法律。
※6 情報通信研究機構  ユビキタス社会を支える情報通信技術の研究開発を目的とした独立行政法人。情報通信分野の総合的な事業支援も行う。
※7 産学官連携UWBコンソーシアム  企業約40社、国立・私立大7大学、総務省が連携してUWBに関する研究を行う組織。
※8 UWB無線PAN用CMOS‐MMIC  USB無線方式を用いた無線PAN(Personal Area Network)を安価に量産できるCMOSで実現したIC(集積回路)。
※9 情報通信審議会  総務省の諮問機関の一つ。電波の流通や利用に関する政策に関する事項を審議する。
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