未来をつくる大学の研究室 情報通信工学
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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今後の研究の広がり
金融や医療など多様な分野と融合していく

 現在、研究室では研究領域を拡大しています。UWBを中心に、コーディング(※10)ITS技術(※11)アレーアンテナ(※12)ソフトウエア無線(※13)、医療情報通信技術の6分野が研究対象ですが、どの分野もこれまでだれも研究していないテーマばかりです。
 この6分野は、一つの技術から派生しました。コーディングはCDMAの技術の基礎となりますが、これがGPS(※14)や車の衝突防止レーダーなどのITS技術に発展しました。 次がアレーアンテナです。アンテナというのは通常、テレビ用、携帯電話用など、用途に応じて設計します。パソコンはソフトウエアを換えるだけで多様な機能を持たせられますが、それと同じように、ソフトウエアを換えるだけで一つのアンテナをさまざまな用途に転用できる技術です。
 この考え方を無線機全体に応用したのがソフトウエア無線です。携帯電話の構造は、大きく無線の回路部分とCPUの部分に分かれます。CPU部分では、ソフトウエアで変調(※15)や符号化、セキュリティの暗号化(※16)などを行いますが、そのソフトウエアを換えることで、携帯電話がテレビになったり、無線LANの端末になったりすることができます。 最近では、05年に学内に設置した未来情報通信医療社会基盤センター(※17)長を務め、無線通信の技術を医療分野へも応用しています。
 私は、無線通信の分野でUWBを軸として、次々と研究領域を広げています。今後、無線通信分野は金融や医療、エネルギー、物流などさまざまな分野と融合しながら、更に伸びていく可能性を持っています。未踏の領域を開拓する意欲と、日本の産業の発展に寄与したいという意欲を持った方は、是非挑戦してほしいと思います。

用語解説
※10 コーディング  デジタル情報の符号化のこと。符号化は、あるデータを一定の規則に従って二進数の並びであるコードに対応させる。 膨大な情報が誤って伝達されることがないよう、符号化によって誤りの検出・訂正を行う。
※11 ITS(Intelligent Transport System)  高度交通システムの略。最先端の情報通信技術を使って人と道路と車両をネットワークでつなぎ、交通渋滞や事故などの交通問題を解決する。
※12 アレーアンテナ  複数のアンテナを組織的にまとめたもの。アレーは「固まり」の意。アレーアンテナを用いることで、通信の高速化、大容量化、通信品質の向上が見込まれる。
※13 ソフトウエア無線  出力や周波数帯の異なる無線通信システムを、1台の無線機のソフトウエアを書き換えることで対応させる技術。第4世代携帯電話への応用が期待されている。
※14 GPS(Global Positioning System)  通信衛星からの電波を利用して自分の位置を数メートル単位の精度で割り出すシステム。自動車のカーナビなどに搭載されている。
※15 変調 データを無線伝送に適した形の波形に変換する操作。
※16 暗号化  第三者に読み取られないよう決まった規則に従ってデータを変更すること。ネットワーク上では重要なセキュリティ施策の一つ。
※17 未来情報通信医療社会基盤センター  02年度採択の横浜国立大21世紀COEプログラム「情報通信技術に基づく未来社会基盤創生」を発展させ、横浜市立大医学部・医学研究科や情報通信研究機構と連携し、情報通信技術に基づく医療福祉社会の基盤の創生を目指す組織。
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高校生へのメッセージ
伸び盛りの研究室を選びたい
 往々にして学生は、有名な教授の研究室に進みたがりますが、私は、むしろ助教授クラスの若手教員で、これから教授を目指して伸びていこうとしている教員に指導を受けることをお勧めします。 大学院生と年齢が近いということもあり、そういう教員ほど学生を引っ張っていってくれますし、新しいことに挑戦しようという研究室は、活気に満ちているものです。
 今後、無線通信分野を究めようとすれば、国際舞台で活躍できる力を身につけることも大切です。英語はもちろん、ディベート力やプレゼンテーション力、ときにはビジネス的な視点も必要になります。中長期的なビジョンと国際的な視野を持った研究室を選んでください。

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