「未来航路プロジェクト」をはじめとする同校の全人教育の成果は、中高一貫の1期生に徐々に現れている。その一つが生徒の意欲の高さだ。
「1期生は高い目標を掲げ、まわりを引っ張る力を持つ生徒が多いと感じます。こうした実態も踏まえ、引き続き生徒や教師の思いを『しなやかに』吸収しながら発展させていくキャリア教育を追求していかなければなりません」(三浦隆志先生)
同校には高校から入学した外進生もいる。中学校から進路意識を醸成してきた内進生と当然差が生まれると思われるが、目標の高さは外進生にも内進生にも共通して見られ、学校全体に波及していくという。それは、同校では中学校で高校の学習内容の先取りをしないため、高1の時点で外進生と内進生が意識の面でも同じスタートラインに立てるからだ。
「内進生と外進生が融和することにより、互いに良い影響を与え合います。そして意識の高い先輩の姿は、後輩の憧れになり、生徒の間でロールモデルとして受け継がれていくのです」(石田隆先生)
中高一貫にした効果は、教科指導にも表れている。例えば、高校の英語教師が、中学校の授業では生徒の活動が重視されていることを知り、高校での指導を見直すことができた。
「中学校の実態を知ることの大切さを改めて思い知りました。それは、中高一貫校でなくても、地域の中高連携によって、十分実現できることだと思います」(仲田輝康教頭)
試行錯誤を重ねる中で、新しい公立中高一貫校の姿を創り上げてきた同校の教師たちには、ある確信が芽生え始めている。
「人間教育という理想を追うことで、進学実績も上げられる。私たちはそう信じています」(杉本尚平副校長) |