特集 公立中高一貫校から学ぶ中高連携
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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乗り入れ授業、転籍で中高間の相互理解を図る

 教科シラバスはあくまで指導計画を示した枠組みであり、それを運用する教師の相互理解がなければ、有効には活用できない。同校は6年間を見通した指導を徹底させるため、中高の教師の乗り入れ授業で相互理解を深めている。浅羽浩校長は次のように述べる。
 「本校では、『心の教育』『学習指導』など7つの重点プログラムを設けています。それらの目標を達成するためには何が必要かを、中高の教師全員が共有しなければなりません。だからこそ、中高の垣根を取り払い、授業を持ち合う経験が必要です」
 乗り入れ授業は、06年度は高校教師12名が中等部を、中等部教師3名が高校を兼務する形で行われた。特に、同校は理数教育に力を入れており、中3から先取り学習をする数学や化学は、すべて高校教師が中等部へ乗り入れる。また、04年度からは高校の数学科・英語科から各1名を中等部へ転籍させている。中等部を3年間経験したあと、07年度に高校へ持ち上がる。西脇先生は高校から中等部に転籍した一人だ。
 「音声や絵を効果的に使う方法や、生徒の動かし方、賞揚の仕方などの指導は、中等部に来て大変勉強になりました。一方、書かせる指導や語彙の定着などの指導は、高校教師の方が慣れています。ワークシートで予習の確認をし、文法や語彙の定着を図るなど、中等部と高校の良い面を融合した授業を心がけています」
 06年度からは、中高の接続を円滑にするため、中高それぞれの教師が1年間、転籍する仕組みを導入した。高3を経験した高校教師が中3を担当し、そのまま持ち上がる。中3まで担当した中等部教師は高1まで指導して中等部へ戻る。接続部分での中高の教師の交流を密にすることで、中だるみ防止に役立てる狙いもある。
 「中高が認識を共有するためにも、相互交流的な人員配置を常にしていく考えです」(浅羽校長)

パートナーシップ制で中高教師が意見交換

  06年度には、更に一歩踏み込み、授業改善に関して中高教師が直接対話する「パートナーシップ制度」を始めた。同一教科の中高の教師がペアとなり、1週間、互いの授業を見せ合い、意見を交換する取り組みだ。進路指導主事で数学担当の中野雅弘先生は、「知的財産の継承という点でも意義深い」と評価する。
 「例えば、数学や理科では、問題の背景にある定理や、高校で学ぶ内容とのつながりを教えることは、学習意欲を喚起する上で大切です。高校教師が中等部で教えることで、生徒の関心を引き出すと同時に、中等部の教師にもそうした視点を持ってもらうことができます」
 1期生が高1に進学した05年度からは、高校教師にアンケートで1期生の学力の状況を聞き、高校進学時までに身につけてほしい事項を中等部にフィードバックしている。「英語は、表現力はあるが書く力が足りない」「数学は計算の遅い生徒が多い」など、各教科で伸びている面、改善が必要な面を明らかにした。
 「生徒の旺盛な知識欲を満足させるためには、教師が目標を共有し、互いに高め合っていくことが大切です。それが魅力ある学校という評価につながると思います」(西脇先生)


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