特集 公立中高一貫校から学ぶ中高連携

佐賀県立致遠館中学校・高校

◎cultivate(自己啓発)、create(創造)、challenge(チャレンジ)の「3C」を校訓とする。県内有数の進学校として、世界の中の日本人として、未来社会の文化の創造と発展に力を尽くす、豊かな人間性と進取の気性に富む人材の育成を目指す。

設立●高校:1988(昭和63)年、中学校:2003(平成15)年

形態●全日制/普通科人文コース、理数科/共学

生徒数(1学年)●高校:約240名(内進生4クラス、外進生2クラス)

06年度進路実績●高校(現役生のみ):国公立大には九州大23名、熊本大12名、佐賀大33名、筑波大3名、東京外国語大1名、大阪大1名など177名が合格。私立大には、早稲田大6名、立命館大29名など延べ414名が合格。

住所●佐賀県佐賀市兵庫町大字藤木1092-1

TEL●0952-33-0401

WEB PAGE●http://www3.saga
-ed.jp/school/chien-hs/

※同校の取り組みはVIEW21高校版2003年6月号でも紹介しています


川﨑湧三

▲佐賀県立致遠館中学校・高校校長

川﨑湧三

Kawasaki Yozo

教職歴33年目。同校に赴任して2年目。「寛容で包容力のあるスケールの大きい人間をじっくり育てたい」

副島一春

▲佐賀県立致遠館中学校教頭

副島一春

Soejima Kazuharu

教職歴30年目。同校に赴任して18年目。「生徒を揺り動かすような情熱を持って、指導していきたい」

荒木信幸

▲佐賀県立致遠館高校

荒木信幸

Araki Nobuyuki

教職歴16年目。同校に赴任して11年目。進路指導主事。「生徒の学びたい気持ちを大事に伸ばしたい」

小部勝巳

▲佐賀県立致遠館中学校

小部勝巳

Kobe Masami

教職歴18年目。同校に赴任して4年目。教務主任。「感謝の心と自己反省の大切さを伝えていきたい」


*本文中のプロフィールはすべて取材時(07年3月)のものです

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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【学校事例・3】中高をつなぐ教師連携

佐賀県立致遠館中学校・高校 ◎ 併設型(03年度に中学校を併設)

一貫教育の基盤として中高の教師連携を強化する

1988年度に開校した佐賀県立致遠館高校は、03年度に中学校を併設した。同校は、どのようにして中高の教師の連携を図っているのだろうか。より組織的に多面的な連携を目指す取り組みを見る。

従来の教育目標を更に強力に展開

  佐賀県で初めて公立中高一貫校となった致遠館高校(VIEW21高校版2003年6月号参照)。同中学校・高校の川﨑湧三校長は、「本校の指導内容は、これまで高校で行ってきた教育を、6年間という長いスパンでより効率的に展開するように捉え直したものであり、一貫校になったことで新たに設定したものではありません」と、これまでの指導からの継続を重視したものであると説明する。
 同校は創立19年目と比較的新しい高校ながら、進学面では県内有数の実績を上げてきた。また、創立当時より理数科、普通科英語コースを設置、世界的な視野を持ったリーダーの育成に努めてきた。中高一貫校としての新しい歴史も、これまでの学校の歩みと軌を一にするものであると考えられている。
 「06年度には一貫校の1期生が高1となり、理数科と普通科人文コースに改編されました。更に、文部科学省のSSHに指定されたことで、開校以来の特色を強化した一貫校となりました」(副島一春教頭)

図1

高1の文理選択を見据え高校教師が中学生に教授

  同校では、高1の時点で理数科と普通科人文コースに分かれるが、その準備として、生徒は中3の選択科目「人文」「理数」を通して、初めての文理選択を体験することになる。
 「中1では身近な大人への職業インタビュー、中2では大学で学べる学問についての研究などに取り組ませ、生徒に徐々に文理を意識させています」(小部勝巳先生)
 中学校3年間の進路学習を計画し、特に中2の2学期以降は、生徒・保護者を対象に、高校教師の協力も得ながら、さまざまな活動を実施している。例えば、中2の2学期には、高校教師が各教科の教科書などを実際に見せながら中学生に内容を説明し、更に理数科、普通科それぞれの高2生が高校での勉強について話すという取り組みを行う。
 「世の中のことを知り、ある程度高校での学びの中身も知った上で、文理を選んでほしいと期待しています。同時に、中学生にとって、文理選択は決して簡単なことではないという思いもあります。それだけに、仮にミスマッチがあったとしても、それを修正する機会はあるということを、生徒や保護者にはしっかり説明しています」(小部先生)
 中3の選択科目「人文」「理数」では、一部、高校の履修内容にも踏み込んだ授業が展開される。これも、生徒にとっては高校で何を学ぶのかを確認し、現状の選択のままでよいかを問い直すチャンスとなる。
 「中2、中3の数学や理科の選択科目では、チームティーチングで高校の教師が中学校の授業に参加しています。例えば、数学なら計算力を高めるための指導を厚くするなど、高校での学習に必要な力を意識しながら指導できるところがメリットです。また、SSHに興味を持った中3生に対して、自然科学への興味を引き出すことも意識しています」(荒木信幸先生)
 同校では、夏休みに、高校の教師が中学生に対して、授業の内容を離れて学問の面白さを自由に伝える「チャレンジセミナー」を実施している。中学生の学びへの関心を高める仕掛けに、高校教師が積極的に関与しているのだ。)


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