特集 公立中高一貫校から学ぶ中高連携
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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知識の詰め込みではなく知識を使える力を育てる

  専門学科が母体の同校では、育てたい生徒像が明確であり、中学校と高校が教育方針のベクトルを一つに合わせやすい。附属中学校教務主任の平林秀二先生も次のように話す。
 「中高共通の目的である『大学卒業後に活躍できる人材』を育てるために、中学生の発達段階に合わせた指導とはどうあるべきかを考えながら、教育プログラムを組み立てています。高校では、中学校以上に覚えなくてはならない知識量が増えます。そのときに『知識を頭に詰め込む』のではなく、『知識を自分のものとして身につけられる』生徒を高校に送り出したい。その素地を育てるのが、中学校の役割だと考えます」
 中学校では、最初のステップとして、家庭学習習慣の確立や授業への集中力の向上といった基本的な学習姿勢を、生徒に身につけさせることを重視する。次のステップとして、授業中に生徒同士で相互に答えを点検し合ったり、批評し合ったりというように、生徒の自学自習力を高める場面を意識的に導入している。
 中3で行う上海への海外研修旅行では、生徒は事前に中国に関する新聞記事を読み、討論する。これにより、生徒は自分なりの問題意識を持って研修旅行に臨める。
 「学びのない活動はする意味がありません」と、平林先生は強調する。同校ではほかにも、職場体験学習やボランティア活動など、あらゆる活動において、生徒が問題意識を持ち、活動の中で何かを学び取る仕掛けを随所に施しているという。
 中学校時代に、自分で考え、答えを導き出す力を育てておくことで、より高度な、より多量の知識の吸収が求められる高校教育への接続をスムーズに図っていこうというわけだ。

中学校で教えて初めて中学生の現状がわかった

  中高の6年間で生徒を育てていくためには、高校の教師が中学生の現状を把握しておくことも重要となる。同校では高校の教師が、中学校の授業にチームティーチングで参加している。高校では物理を担当する小西毅彦先生も、05年度には中2、06年度には中2、中3の理科を担当した。
 「中学校の授業では、中学生向けにスピードを落とすように意識していたつもりでした。しかし、実際に教えてみて、中学生は学んだことを吸収して理解するまでに、かなり時間を要することを痛感しました。中学生の発達段階では、教育でいえば『教』よりも『育』の部分、つまり生徒に教え込むことよりも、生徒自身の学ぶ力を育てていく方が重要なのです。実際に中学生を教えたことで、初めて中学校側が組んだ教育プログラムの意味が見えてきました」
 07年度には、04年度に附属中学校に入学した1期生が、高校に進学する。小西先生は、その1年生の学年主任を担当する。
 「生徒が中2、中3だったときの状況を把握した上で、高1のプログラムをつくっています。従来は高1の1学期の初期指導で、生徒を『高校生』に仕立て上げようと半ば強引に指導する向きがありましたが、今後は中高の連続性の中で、生徒を取りこぼすことなく、着実に『高校生』へと育てていくことができます。この効果は大きいですね。高3の段階では、大学教育へと接続させるために、学習から学問、つまり『学び問う』という姿勢を生徒が身につけられるようにしたいと考えています」
 中高の6年間を見通し、生徒の発達段階に合わせた教育プログラムを組む。それが西京高校・附属中学校の特徴だ。「まだ附属中学校1期生が高校進学を果たしたばかり。本校の中高一貫教育を評価できるのは、数年先のこと」と村上教頭が話す通り、その成果が注目される。


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