特集 公立中高一貫校から学ぶ中高連携

東京都立小石川中等教育学校

◎政界、学会など多方面で活躍する数々の人材が輩出してきた東京都立小石川高校(1918年創立)を母体に、2006年度に開校した。現在は高校と中等教育学校の2つの学校が併存しているが、09年度には高校の募集を停止。11年度から完全に中等教育学校へと移行する。

設立●高校:2006(平成18)年

形態●中等教育学校/共学

生徒数(1学年)●約160名

06年度進路実績●(小石川高校):国公立大には東京大、東京工業大、一橋大、北海道大、千葉大など79名が合格。私立大には早稲田大、慶應義塾大、上智大、立教大、明治大、法政大など延べ739名が合格

住所●東京都文京区本駒込2-29-29

TEL●03-3946-5171

WEB PAGE●http://www.
koishikawachuto-e.
metro.tokyo.jp
/KOISHIKAWA%20HP/index.html

遠藤隆二

▲東京都立小石川中等教育学校校長

遠藤隆二

Endo Ryuji

教師歴38年目。同校に赴任して3年目。「将来、生徒が第一線で活躍し、本校に講演に来る日が楽しみです」


*本文中のプロフィールはすべて取材時(07年3月)のものです

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 17/23 前ページ  次ページ

【学校事例・6】 都立一貫校のビジョン

東京都立小石川中等教育学校 ◎ 中等教育学校(06年度に開校)

「小石川教養主義」を軸にバランス良く学力を育成する

2006年度、東京都立小石川高校を母体に、東京都立小石川中等教育学校が開校した。首都圏では私立中高一貫校人気が続く中、公立の中等教育学校として、どのような6年間の教育を目指しているのだろうか。

すべての教科を偏りなく学ぶ

   小石川中等教育学校の母体である小石川高校は、東京府立第五中学校を前身とする伝統校だ。理念は「立志・開拓・創作」。小石川中等教育学校もこれを受け継ぎ、1・2年生を「立志」、3・4年生を「開拓」、5・6年生を「創作」の期間と位置づけ、6年間を「2―2―2」に分けたカリキュラムとした。
 「本校は、中学校と高校を単につないだ学校ではありません。中学校と高校とで重複する部分を細かく見ながら指導内容を精選し、6年間を体系化させたカリキュラムをつくりました。生徒の実態に応じた教材を中高関係なく選び、授業を進めています」(遠藤隆二校長)
 2006年度1期生の1年生は、中学校の教科書だけでなく、必要に応じて高校用の資料集や副教材を授業で使っている。
 同校が特に力を入れるのが「理科好き、数学好きを育てる自然科学教育」だ。小石川高校は文部科学省のSSHの指定校であり、ポーランド科学アカデミー主催の高校生物理論文コンテストに3年連続入選している。この実績を生かし、中等教育学校でも自ら課題を見つけて解決し、論文を書く力を6年間かけて磨いていこうという取り組みだ。
 「理科の授業は実験や実習が中心で、物理、化学、生物、地学の各分野の高校教師が教えています。毎年数人がこのコンテストに英語論文を応募していますが、その数を10倍にするのが目標です」(遠藤校長)
 そのほかの教科でも、高校教師が中等教育学校で、中等教育学校の教師が高校で、それぞれ授業を受け持っている。
 大学教員による講演会「小石川セミナー」は、年数回、1年生を対象に開催した。820人もの卒業生が大学教員として活躍しているというネットワークが大きな強みだ。
 「1年生から学問の最前線について聞かせているのは、志を立ててほしいから。講演会は生徒からの質問が相次いだため、30分延長するなど関心は非常に高いです」(遠藤校長)
 6年間を通して、文系・理系のクラス分けはない。4年生までは生徒全員が全教科を学び、5年生後半からは自分の進路希望に合った選択講座を受けるスタイルとなる。
 「すべての教科を偏りなく学ぶ『小石川教養主義』が伝統です。幅広い教養を身につけてこそ、その中から本当に学びたい学問が見つかると考えています」(遠藤校長)
 ただ12歳という早い段階で生徒を選抜するため、学力差が広がりやすいと、遠藤校長は打ち明ける。
 「教師の指示以上のことをする生徒がいる一方、授業から遅れがちな生徒もいます。特に積み重ねが大切な英語と数学にその傾向が出やすく、そうした生徒は補習でフォローしています

図1

  PAGE 17/23 前ページ 次ページ