小石川中等教育学校の母体である小石川高校は、東京府立第五中学校を前身とする伝統校だ。理念は「立志・開拓・創作」。小石川中等教育学校もこれを受け継ぎ、1・2年生を「立志」、3・4年生を「開拓」、5・6年生を「創作」の期間と位置づけ、6年間を「2―2―2」に分けたカリキュラムとした。
「本校は、中学校と高校を単につないだ学校ではありません。中学校と高校とで重複する部分を細かく見ながら指導内容を精選し、6年間を体系化させたカリキュラムをつくりました。生徒の実態に応じた教材を中高関係なく選び、授業を進めています」(遠藤隆二校長)
2006年度1期生の1年生は、中学校の教科書だけでなく、必要に応じて高校用の資料集や副教材を授業で使っている。
同校が特に力を入れるのが「理科好き、数学好きを育てる自然科学教育」だ。小石川高校は文部科学省のSSHの指定校であり、ポーランド科学アカデミー主催の高校生物理論文コンテストに3年連続入選している。この実績を生かし、中等教育学校でも自ら課題を見つけて解決し、論文を書く力を6年間かけて磨いていこうという取り組みだ。
「理科の授業は実験や実習が中心で、物理、化学、生物、地学の各分野の高校教師が教えています。毎年数人がこのコンテストに英語論文を応募していますが、その数を10倍にするのが目標です」(遠藤校長)
そのほかの教科でも、高校教師が中等教育学校で、中等教育学校の教師が高校で、それぞれ授業を受け持っている。
大学教員による講演会「小石川セミナー」は、年数回、1年生を対象に開催した。820人もの卒業生が大学教員として活躍しているというネットワークが大きな強みだ。
「1年生から学問の最前線について聞かせているのは、志を立ててほしいから。講演会は生徒からの質問が相次いだため、30分延長するなど関心は非常に高いです」(遠藤校長)
6年間を通して、文系・理系のクラス分けはない。4年生までは生徒全員が全教科を学び、5年生後半からは自分の進路希望に合った選択講座を受けるスタイルとなる。
「すべての教科を偏りなく学ぶ『小石川教養主義』が伝統です。幅広い教養を身につけてこそ、その中から本当に学びたい学問が見つかると考えています」(遠藤校長)
ただ12歳という早い段階で生徒を選抜するため、学力差が広がりやすいと、遠藤校長は打ち明ける。
「教師の指示以上のことをする生徒がいる一方、授業から遅れがちな生徒もいます。特に積み重ねが大切な英語と数学にその傾向が出やすく、そうした生徒は補習でフォローしています |