脳は、私たちが考え、悩み、行動するといった人間らしく生きていく上で必須となる働きを担っています。脳には、体のすべてをコントロールするという機能がありますが、元々は数千億個ともいわれる膨大な数量の神経細胞で成り立っています。
この神経細胞がシナプス(※6)でつながってネットワークをつくり、同じ機能を持つネットワーク同士が集まり、感覚や運動をコントロールするシステムとなり、それらが脳に統合されているのです。これを「階層構造」と言いますが、一つひとつは目に見えない小さな神経細胞が、階層を一つ上がるごとに、それまでになかった高次で新しい機能を発揮する、という特徴があるのです。
では、その神経細胞がなくなったら、どうなってしまうのでしょうか。神経細胞はたとえ小さくても、脳を構成し、その機能の一端を担っているのです。神経細胞が受け取った情報を脳まで伝えられなくなりますし、逆に脳からの情報を身体の各器官に伝えられなくなります。こうして、手足にしびれを感じたり、ひどくなると動かなくなったりするのです。
神経細胞は全身にくまなく張りめぐらされています。その一つでも異常をきたすと症状が出ますし、指、腕、足、言語、視覚、聴覚など、部位や機能によって病気の種類は異なります。ですから、神経系の病気は300種類以上にも上り、私たち神経内科医は常に全身のことを考えながら診察しているのです。
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