未来をつくる大学の研究室 神経内科学
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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研究の発展性
完治はできなくても少しでも症状を抑える治療法を

  私が神経内科学の研究を始めたときには、正直に言って、自分が生きている間には脳や神経の難病の治療法は見つからないと思っていました。原因を突き止めたくても手がかりが消えてしまう、まさに「完全犯罪」ともいえる病気だからです。
 しかし、分子遺伝学や分子生物学といった医学以外の分野でも研究が進み、分子レベル、遺伝子レベルで解明されるようになりました。また、技術も大幅に進歩し、CT(※10)MRI(※11)によって、体を切ったり細胞を採取したりしなくても、今まで見ることができなかった体内の様子を詳細に観察できるようになりました。それらの成果を統合して研究を進めることで、発病因子を特定し、一部の治療法は臨床試験に進めるほどの成果を上げるに至っているのです。

写真3
写真3 MRIで撮影した脳の内部の断面図。脳の断面を少しずつ位置をずらしながら撮影していくことで、脳のどこに異常があるのか、異常はどれくらい広がっているのかなど、詳しくわかるようになった

 もちろん、患者の側から見れば、病気が完治する治療法が見つかっているわけではありません。ただ、完治する方法を見つけるのが困難である以上、「原因を根本から治す」という考えだけでなく、「症状を少しでも和らげる」という発想での研究も必要です。そういった意味で、私たちの研究は微々たるものでも確実に前進しています。そうしたことに貢献できることが、医師としてのやりがいであり、喜びなのです。

用語解説
※10 CT  コンピュータ断層投影法の略。細かいX線をいろいろな角度から投射し、体の内部を輪切りのような状態で観察できる。
※11 MRI  磁気共鳴画像装置の略。磁気と電波によって、体内の画像を撮影する装置。脳や脊髄など、CTでは撮影しにくい部位の診療に使われる。
写真
高校生へのメッセージ
「病気を治す」という強い志が必要
 元気になった患者の喜ぶ姿に接するたびに、私も本当に嬉しくなり、自分の仕事にやりがいを感じます。一方で、力及ばず、死にゆく人にも直面します。医師は常に人の生死と向き合う職業です。「病気を治す」「病める人の役に立つ」という強い志がなければ務まりません。医師を目指そうとする人には「自分は本当に医師に向いているのか」ということを真剣に考えてほしいのです。
 医師という職業に就こうとするなら、日本の教育システム上、大学受験時に決めなければなりません。高校生の皆さんにとって、将来の職業を考えるのは難しいことでしょう。しかし、医師とはそういうことを考える必要がある職業であるということは、知っておいてください。

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