私が神経内科学の研究を始めたときには、正直に言って、自分が生きている間には脳や神経の難病の治療法は見つからないと思っていました。原因を突き止めたくても手がかりが消えてしまう、まさに「完全犯罪」ともいえる病気だからです。
しかし、分子遺伝学や分子生物学といった医学以外の分野でも研究が進み、分子レベル、遺伝子レベルで解明されるようになりました。また、技術も大幅に進歩し、CT(※10)やMRI(※11)によって、体を切ったり細胞を採取したりしなくても、今まで見ることができなかった体内の様子を詳細に観察できるようになりました。それらの成果を統合して研究を進めることで、発病因子を特定し、一部の治療法は臨床試験に進めるほどの成果を上げるに至っているのです。 |