指導変革の軌跡 神奈川県・私立 横浜隼人中学・高校「進学実績向上」
神奈川県・私立横浜隼人中学・高校

神奈川県・私立
横浜隼人中学・高校

二期制、90分授業の導入により授業時数の確保を図るなど、学習指導に力を注ぐ。吹奏楽部は05年に東日本大会で金賞を受賞、卓球部は06年にインターハイに出場、美術部は8年連続で全国展に選抜されるなど、部活動も盛ん。

設立●1977(昭和52)

形態●全日制/普通科・国際語科/共学

生徒数(1学年)●約500名

06年度進路実績●国公立大には東京農工大、横浜国立大、首都大学東京、横浜市立大、九州大など22名が合格。私立大には青山学院大、上智大、法政大、明治大、立教大、早稲田大など延べ694名が合格。

住所●神奈川県横浜市瀬谷区阿久和南1-3-1

TEL●045-364-5101

WEB PAGE●http://www.hayato.ed.jp/


鈴木紀代子

▲横浜隼人中学・高校校長

鈴木紀代子

Suzuki Kiyoko

教職歴36年目。同校に赴任して20年目。「充実した高校生活を送れるよう、生徒一人ひとりを大切にしたい」

吉野純三

▲横浜隼人中学・高校教頭

吉野純三

Yoshino Junzo

教職歴・赴任歴共に29年目。「生徒一人ひとりを大切にしながら、自信を引き出す指導をしていきたい」

永野多嘉子

▲横浜隼人中学・高校教頭

永野多嘉子

Nagano Takako

教職歴38年目。同校に赴任して1年目。「自分たちの学校に誇りを持てる生徒になってほしいと思います」

奈良信之

▲横浜隼人中学・高校

奈良信之

Nara Nobuyuki

教職歴・赴任歴共に18年目。進路指導主任。「目標を実現するために頑張る生徒を応援していきたい」

黒川剛志

▲横浜隼人中学・高校

黒川剛志

Kurokawa Tsuyoshi

教職歴・赴任歴共に16年目。進路指導副主任。「厳しさに耐えられる強い精神を持った生徒を育てたい」


*本文中のプロフィールはすべて取材時(07年3月)のものです

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 5/13 前ページ  次ページ

指導変革の軌跡82


神奈川県・私立 横浜隼人中学・高校「進学実績向上」

手厚い指導で生徒の意欲を高め、進学実績の向上を実現する

● 実践のポイント
二期制や90分授業を導入し、授業時数を確保する
放課後の補習や早朝テストを実施
卒業生の講演会などで、生徒のチャレンジ精神を育て、やる気を高める

急激な生徒増により進学実績が低迷

 横浜隼人中学・高校は、普通科・国際語科を擁する私立校だ。1977年、大学進学を目指す少数精鋭の男子校として創立。87年には共学化、88年には英語教育に重点を置く国際語科を設置するなど、改革を重ねてきた。しかし、厳格な生徒指導を貫いていたためか、入学者数は低迷。創立から10年経っても、1学年の生徒数は100人前後だった。
 その状況を打開すべく、同校は共学化を機に、県内の中学校を訪問し始めた。それまで、生徒募集は入試のみの対応だったが、積極的な生徒獲得に乗り出したのだ。団塊ジュニアの進学時期と重なったこともあって志願者は激増し、89年度入試の結果、666名の生徒が入学した。
 ところが、急激な生徒数の増加は、さまざまな歪みをもたらした。生活態度に問題のある生徒も少なからず入学したことから、教師は一転して生徒指導に忙殺されることになった。学力も総じて落ち始め、進学実績が低迷。公立大の指定校を取り消される事態にまで陥った。鈴木紀代子校長は、当時を次のように振り返る。
 「それまでは国公立大の合格者がいましたが、生徒数が増えたあとは、4年制大進学者の総数が1割にも満たない状態が続きました。本校は一貫して大学進学者数の増加を目指してきましたが、そのときばかりは『進学校の旗印を降ろす』と明言せざるをえない状況になっていたのです」

二期制を導入して授業時数の確保を図る

 同校は、生徒指導の徹底と並行して、生徒の学力を高めるさまざまな改革に着手した。
 最初の改革は、94年度の特進クラス(現在は特別選抜コース)の設置だ。入学者確保を重視した89年度入試の反省を踏まえ、90年度入試以降は合格ラインを上げて、入学者数を400名に絞った。生徒指導の成果と相まって、徐々に相対的に学力の高い生徒が入学してきたため、その一部を1クラスにまとめて特進クラスにしたのだ。
 この学年の卒業時から、国公立大や難関私立大の合格者が出始め、進学実績はだんだんと上向いていった。併せて、当時、神奈川県の高校ではほとんど行われていなかった習熟度別授業を導入し、学力に応じた手厚い指導を心がけた。
 ただ、これらの指導には不満を持つ生徒も少なくなかった。進路指導副主任の黒川剛志先生は、生徒に繰り返し習熟度別授業のメリットを説明したが、理解を得るのが大変だったと打ち明ける。
 「当時は、定期考査の成績に基づいて、学期ごとに教科内でクラス替えをしていました。下のクラスになった生徒からは『こんな制度は嫌だ』という声も聞かれました。しかし、学力に適した指導を受けることで授業をきちんと理解できるようになると何度も説明したところ、次第に生徒から不満の声はなくなりました。導入から3年ほど経ち、ある生徒から『次は絶対上のクラスに上がってみせます』という言葉を聞いたときには、嬉しさが込み上げてきました」
 99年度には二期制を導入した。
 「教師からは、3学期制を改める必要性を問う声が上がりました。しかし、生徒の学力向上のために必要なら、授業時数を増やすことも大切です。生徒のためという気持ちで教師の心を合わせました」(吉野純三教頭)


  PAGE 5/13 前ページ 次ページ