指導変革の軌跡 京都府立東宇治高校「学校改革」
栃木県立宇都宮白楊高校

京都府立 東宇治高校

学力標準コースである第Ⅰ類、難関大を目指す第Ⅱ類(文理系・英語系)を設置。オーストラリアとタイの高校と提携し、国際交流を積極的に展開する。06年度には京都府の学力向上フロンティア校にも指定された。

設立●1974(昭和49)年

形態●全日制/普通科(第Ⅰ類・第Ⅱ類)/共学

生徒数(1学年)●約200名

06年度進路実績●国公立大には、筑波大、京都工芸繊維大、奈良教育大、神戸大、京都府立大、大阪外国語大など40名が合格。私立大には、同志社大、立命館大、関西大、関西学院大など延べ195名が合格。

住所●京都府宇治市木幡平尾43-2

TEL●0774-32-6390

WEB PAGE●http://www.
kyoto-be.ne.jp/higashiuji-hs/


木村滋世

▲京都府立東宇治高校校長

木村滋世

Kimura Shigeyo

教職歴38年目。同校に赴任して6年目。「幅広い視野と心を持った生徒に育ってほしいと思います」

笠谷卓生

▲京都府立東宇治高校

笠谷卓生

Kasatani Takao

教職歴22年目。同校に赴任して2年目。総務企画部長。「信念と強い心を持って生きる生徒を育てたい」

吉川孝

▲京都府立東宇治高校

吉川孝

Yoshikawa Takashi

教職歴22年目。同校に赴任して5年目。進路指導部長。「人間的に成長し、良い人生を送れる土台をつくってほしい」


*本文中のプロフィールはすべて取材時(07年3月)のものです


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指導変革の軌跡83


京都府立 東宇治高校「学校改革」

「実践値教育」の理念の下、生徒全員参加の指導を徹底

● 実践のポイント
「アカデミックサタデー」と「進路社」で学習量の確保と学習習慣の確立を図る
授業公開や生徒による授業アンケートにより、授業改善を推進
3年間を前期・後期に分けて行事を組み、受験に向けて早いスタートを切る

統廃合の危機を前に教師が改革を嘆願

 「校長、お話が…」
 2001年春、木村滋世校長が京都府立東宇治高校に赴任して間もなく、数名の教師が校長室を訪れた。目的は学校改革の嘆願だった。
 当時、同校には確たる特色がなく、このままでは統廃合の対象になるおそれがあった。魅力ある高校にするためには、教師が「しんどい」思いをしてでも学校を変えるべきではないか…。教師たちのそうした思いから、木村校長に授業時数の確保を中心とした改革の必要性を訴えた。
 教師たちが危機感を抱いていたのは、03年度高校入試で、総合選抜制から単独選抜制への移行が決まったからだ。地区内の高校を中学生が自由に選べるようになるため、「選ばれる学校」になることが至上命題となった。木村校長は、「先生方の言葉からは、生徒のことを真剣に考える気持ちが強く伝わってきました。学校の行く末を憂い、改革を望む教師がいることが非常に嬉しかったです」と振り返る。
 更に、学校週5日制による授業時数の減少と学力低下への危惧、そして統廃合の問題もあった。京都府教育委員会は、07年度に同地区の12校のうち4校を2校に統合し、計10校に再編することを決定。同校は統合校の候補に挙げられていた。

「実践値教育」で生徒全員参加の指導を目指す

 教師の熱意に支えられ、学校の存続をかけた改革が始まった。ただ、同校は、研究指定校でも、特別な施設のある学校でもない。「普通の学校」が劇的に変わるためには、既存の考え方にとらわれず、自由なアイデアをくみ上げるシステムが必要だった。
 そこで、木村校長は、01年秋に一部の分掌の部長と若手教師の8名からなる諮問機関「ビジョン・プロジェクト」を立ち上げた。ここでの発案を木村校長が分掌会議に提案し、実現の可能性や実施方法を検討する。「分掌会議は、年間行事を切り盛りするだけで精一杯です。失敗してもいいので、斬新なアイデアを出してもらおうとビジョン・プロジェクトをつくりました」と木村校長は述べる。
 実施が決まると、実際の運営は内容に応じて各分掌が担当するが、どの取り組みでも重視したのは、「実践値教育」という理念だ。実践値教育とは、「参加する生徒の数を限りなく100%に近付ける」「取り組みの始めと終わりをしっかり行う」という、木村校長の考え方だ。
 「どんな取り組みも、ある程度は強制してでも、生徒を指導の土俵に乗せることが大切です。そうすることで、生徒には学校の取り組みに参加する習慣が身につき、何事にも『集団で頑張る』という雰囲気が醸成されていきます。また、取り組みの始めにねらいを示し、終わりにはまとめをしっかり行うことで、生徒の意識は大きく変わります」(木村校長)

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