同校は、1年次から生徒を学力層別に分けて、国数英の添削指導をしてきた。中でも力を入れたのが成績下位層だ。2年次1学期の期末考査の直前には、校内にある同窓会館で成績下位層の30名に対して2泊3日の学習合宿を新たに行った。総務部長の佐藤敏先生は、その意図を「学力の向上もさることながら、私たちはあなたたちをきちんと見ている、何とかしたいんだというメッセージを伝えたかったからです」と述べる。
授業終了後、生徒は同窓会館に行き、食事と風呂以外の時間は、学年団の指導の下で国数英に取り組む。生徒の集中力が切れないよう30分ごとに取り組む教科を変え、眠くなるころを見計らって英語を暗唱させた。
着実に学力を伸ばしてきた「新生・酒東」の1期生だが、2年次の7月、一つの壁にぶつかった。1年次の1月まで順調に推移していた模試の成績が、2年次7月の模試で大きく下がったのだ。原因は数学の不振だった。国公立大を志望する生徒にとっては、文系・理系を問わず、数学の成績は合否に大きくかかわる。早急にてこ入れを図り、学力を下支えする必要があった。
そこで、2学期から「朝の数学」と題して、毎朝の「読書の時間」を数学の演習に充てることにした。数Ⅰ・Aから始めて数Ⅱ・Bへと、教科書の例題をひたすら解かせる。毎週火曜日の1限に行っていた国数英の「1校時テスト」も数学に絞り、週末課題もほとんど数学に割り当てた。数学にシフトした指導は、3年次のセンター試験直前まで続けられた。数学担当の1人、加藤千雅先生は生徒の頑張りを次のように称える。
「かつて文系の生徒の中には、伸び悩む理系科目をあきらめて、私立大に志望校を変える生徒が少なくありませんでした。しかし、この学年の生徒は、ほぼ全員が最後まで数学に取り組みました。私たちの言葉を素直に受け入れて頑張ってくれたので、私たちもやりがいを感じました」
こうした指導の結果、2年次11月の模試では、数学の偏差値が東北地方を代表するような進学校を上回った。一度きりではあったが、教師も生徒も「頑張れば必ず成果が出る」という思いを強くした。
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