指導変革の軌跡 山形県立酒田東高校「学校改革」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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生徒に志望校を公言させてモチベーションを高める

 同校は、生徒の受験に対するモチベーションの維持・向上にも力を入れた。「生徒は、受験に対して一度不安を抱くと、安心したいがために、目標を下げようとします。最後まで高い目標を維持させることは、学習指導と同様に大切なことです」と、進路部長の石川一男先生は強調する。
 2年次の11月には、企業・大学訪問を行った。段取りはすべて生徒の手で進められた。各グループで訪問したい企業・大学を選び、生徒自身が企業や大学に連絡を取り、訪問日を打ち合わせた。そして、例えば大学訪問をしたグループは、キャンパスを行き交う大学生に声をかけ、インタビューをした。こうした研修の結果はレポートにまとめられた。
 「大学進学へのモチベーションを高めると共に、大学と社会とのつながりを実感させる良い機会になりました」と石川先生は言う。
 普段の学校生活の中にも、モチベーションを維持する仕掛けを組み込んだ。2年次では、模試のたびに生徒全員に志望校と目標偏差値を書かせ、教室に掲示したのだ。進路部の齋藤和浩先生は、「本校には控えめな生徒が多い。目標を公言させることで、取り組まなければならない状況をつくりたかった」と、その意図を明かす。
 志望校の公言は、学年団の足並みをそろえる上でも有効だった。教師は生徒全員の志望を把握できるため、志望を変えたという生徒の話を聞けば、担任以外の教師もその生徒を励ましたり、廊下ですれ違った際に声をかけたりすることができるようになった。加えて、総務部の後藤由紀子先生は、「生徒間でも、切磋琢磨し合う雰囲気が生まれた」と指摘する。
 「勉強の苦手な生徒が、ほかの生徒に質問するなど、生徒同士で学び合う光景が見られるようになりました。自分たちは多くの先生に支えられているという安心感が、生徒のモチベーションを維持し、生徒間の一体感を生み出したのだと思います」


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