指導変革の軌跡 山形県立酒田東高校「学校改革」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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高い目標を掲げたこと自体が大きな自信に

 「新生・酒東」への脱皮を目指した04年度入学生の改革はひとまず成功に終わった。佐藤先生はその理由を次のように総括する。
 「この学年には、まじめさと粘り強さがよく見られました。志望校を安易に変えたり、科目数を減らして私立大に切り替えたりした生徒はほとんどいませんでした。最後まで目標に向かって頑張ったことが、躍進の最大の原動力になったと思います」
 生徒の努力に加え、齋藤先生は「学年団の結束」を指摘する。
 「次に何をすべきか、常に学年団全員でコンセンサスを取り、足並みをそろえながら進められたのが良かったのだと思います。同じ目的意識を持って取り組みを推進できたからこそ、生徒も私たちを信じてついてきてくれたのでしょう」
 ただ、手放しで喜べない面もある。1つは、他学年への継続だ。宿泊研修や学習記録などの取り組みは、他学年でも行われるようになったが、その意義や教師の思いまではまだ十分に伝えきれていないと、学年団は感じている。
 2つめは進学実績だ。「新生・酒東」の学年団を立ち上げた際に掲げた目標は、国公立大150名以上、東京大・京都大3名以上、国公立大医学部医学科3名以上、東北大20名以上。これらの目標には届かなかった。石川先生は「生徒がより高い目標に挑戦する意欲と学力を身につけさせたい」と語る。  生徒にとって、この3年間はどのような意味があったのだろうか。
 07年3月、毎年恒例の3年生による合格体験発表会で、東北大の前期試験に合格したある生徒は言った。「結果的には届かない場合もあるけれど、高い目標を掲げたこと自体が自分に対する大きな自信につながりました」。卒業式では、別のある生徒が次のように述べた。「クラスの仲間にも恵まれたけれど、何より嬉しかったのは先生たちが一生懸命指導してくれたこと。最高の学年でした」。
 こうした改革モデルが、その意義や教師の思いと共に他学年に継承され、学校全体の指導スタイルへと発展するかどうか。「新生・酒東」の更なる挑戦は続いていく。

図2

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