指導変革の軌跡 茨城県・私立清真学園高校・中学校「学習意欲の向上」
茨城県・私立清真学園高校・中学校

茨城県・私立清真学園高校・中学校

豊かな知性を持ち真理を追究する生徒の育成を目指す。6年間を前期・中期・後期に分け、発達段階に応じた指導を実践。高2から文理コース選択制を導入し、各自の志望に応じてサポートする。ラグビー部、少林寺拳法部などは全国大会の常連。

設立●1978(昭和53)年

形態●全日制/普通科/共学

生徒数(1学年)●約200名

07年度進路実績●国公立大には東北大、筑波大、東京大、千葉大、横浜国立大など51名が合格。私立大には上智大、慶應義塾大、東京理科大、中央大、明治学院大、早稲田大など延べ403名が合格。

住所●茨城県鹿嶋市宮中伏見4448-5

TEL●0299-83-1811

WEB PAGE●http://www.
seishingakuen.ed.jp/


佐藤敏近

▲清真学園高校・中学校校長

佐藤敏近

Sato Toshichika

教職歴・同校赴任歴共に29年目。「自ら考え決断できる、自立した生徒を育てていきたいと思っています」

石塚上

▲清真学園高校・中学校

石塚上

Ishizuka Noboru

教職歴15年目。同校に赴任して8年目。学習指導部長。「自らの義務を果たし、自己主張できる生徒を育てたい」

金子敦

▲清真学園高校・中学校

金子敦

Kaneko Atsushi

教職歴15年目。同校に赴任して13年目。前・進学指導部長。「自分で考え、チャレンジできる生徒になってほしい」

吉川祥代

▲清真学園高校・中学校

吉川祥代

Yoshikawa Sachiyo

教職歴・同校赴任歴共に13年目。国際交流担当。「先を見据えて行動できる生徒を育てていきたいと思っています」

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指導変革の軌跡85


茨城県・私立清真学園高校・中学校「学習意欲の向上」

外部の人材を積極的に活用し、中3生・高1生の意欲を喚起する

● 実践のポイント
大学教員や企業人、卒業生ら、外部からの刺激で生徒の学習意欲を喚起
国際交流により学習意欲の向上、英語力の向上を果たす
授業アンケート、アチーブメントテストなどで校内の活性化を図る

学習に対する姿勢が受け身な生徒たち

 清真学園高校・中学校は、工業とサッカーの街・鹿嶋市にある私立の中高一貫校だ。開校して30年ほどだが、例年、東京大や京都大などの難関大に合格者が輩出する県内有数の進学校でもある。
 中3から高1にかけての「中だるみ」は、多くの中高一貫校が抱える悩みだが、2003年度に同校が改革に乗り出した背景もここにあった。学習指導部長の石塚上先生は、改革の狙いをこのように述べる。
 「高い意欲を持って入学してくる生徒でも、中1、中2と学年が上がるにつれて次第に緊張感を失い、ともすれば漫然とした生活を送りがちです。事実、家庭学習時間を調べたところ、中3の時期が最も少なく、高2、高3にかけて急に増えていく傾向が見られました。生徒がより充実した6年間を送るためにも、中3と高1の生徒に対するてこ入れが急務だと感じました」
 同校があえてこの時期に中だるみ対策を始めた理由は、これだけではない。佐藤敏近校長は、これまでの指導が通用しなくなってきていることに危機感を抱いていたと話す。
 「家庭学習時間が少ないというだけでなく、学習に取り組む姿勢そのものにも変化を感じています。言われたことにはきちんと取り組むけれども、自分で工夫して学習に向かう生徒はそれほど多くありません。教師が授業にいろいろ工夫を凝らしても、いまひとつ生徒の心には響かない。やみくもに学習させるのではなく、まず生徒自身の学習意欲を高めることが、効率的な学習につながると考えました」

著名人や卒業生の話で将来に目を向けさせる

 生徒の学習意欲を高めるために、同校が着目したのは、著名人や卒業生ら外部人材の活用だ。
 同校では10年前から、中学校・高校共に年1回、著名人を招いて講演会を行っているが、それに加えて、03年度からは中3生と高1生を対象とした「土曜セミナー」も始めた。大学教員や企業の研究員、経済同友会のメンバーなど、社会の第一線で活躍する人物による講演会だ。文系・理系各2名を招き、生徒は毎回いずれか一つの講演会に参加する。06年度は年7回、延べ28名を招いた。この講演会には、保護者にも参加してもらう。目を輝かせながら熱心に話を聞く生徒の姿を見てもらうと共に、親子のコミュニケーションのきっかけとしてほしいからだ。
 講演依頼に際しては、大学や企業に次のようなお願いをしている。
 「中3生と高1生が対象ですから、難しい内容ばかりでは生徒の共感は得られません。できるだけ若い教員や研究者に来てもらえるように依頼しています。話の内容も、どのようなプロセスを経て現職に就いたのか、学生時代にどのような学習をしてきたのかということまで語ってもらい、生徒が仕事や研究をイメージしやすいようにしています」(佐藤校長)
 高1生を対象とした、卒業生との「職業座談会」も05年度から始めた。これは、卒業生が生徒と座談会形式で、仕事の内容ややりがい、現在までのキャリアについてざっくばらんに語り合うというもの。06年度は医師や弁護士、建築士、銀行員など、幅広い職種から12名の卒業生を招へいし、生徒は話を聞いてみたい卒業生を1名選んで参加した。
 これまでも、同校では卒業生による講演会を行っていた。それを座談会形式に改めた意図を、石塚先生は「自分たちの先輩とはいえ、大教室で一方的に話されるだけでは、生徒の心に響きにくいと考えています。先輩と直接話をすることで、生徒は自分の将来に引き寄せて考えることができると思います」と説明する。
 社会で活躍する先輩の話に「勇気をもらった」と、感想を述べた生徒もいた。救急医療の現場の生々しい状況を聞いた医師志望の生徒は、「自分にできるだろうか」と漏らしたという。仕事の厳しさ、自らの適性に思いをめぐらせることで、進路を見つめ直すきっかけになっている。


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