指導変革の軌跡 宮崎県立宮崎商業高校「進路指導」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 11/13 前ページ  次ページ

「進路カルテ」で生徒のライフプランまで共有

 06年度、同校は進路指導のテーマとして「正社員として定職に就く」を掲げた。「進学しても、いずれは働くことになります。正社員として定職に就くことの大切さを認識させ、より良い進路選択につなげてもらうことが目的です」と、原田校長はテーマに込められた思いを話す。
 そのために必要なのは、生徒の意識を専門学校に安易に流さないようにし、大学へと向けることだ。しかし、大切なのは、単に大学進学実績を上げることではない。犬塚治憲先生は、商業高校生にとっての大学進学を次のように位置づける。
 「商業高校で学ぶ専門的な内容は、大きくは簿記と情報の二つです。それらのスキルを更に磨き、発展させていく場として、大学こそ適切と考えています。特定の分野を深く学んだ生徒だからこそ、大学に進学していろいろな人と出会ってコミュニケーションし、幅広い人間観や社会観に触れてほしいのです」
 同校は、06年度に3年生全員の進路情報を記載した「進路カルテ」(図1)を校内のイントラネット内に構築し、進路指導部と3年学年団で共有できるシステムを整備した。生徒一人ひとりの学力、資格取得の状況、希望進路、部活動の実績など、大学の推薦要件などの情報を共有することで、どの教師が相談を受けても、指導がぶれないようにするためだ。

図1

 中でも重視するのが、将来像に関するアンケート結果を反映した「ライフプラン」の項目だ。「総合職希望」「収入は定収入で安定が望ましい」「結婚後も正社員として働きたい」など、生徒の思い描くライフプランが手に取るようにわかる。田代先生は「総合職を希望している生徒が、高卒で就職を希望するのは、明らかなミスマッチです。この生徒の成績が良ければ、大学進学を勧めることもできます。将来像と希望進路のミスマッチを探し出せるようになったことで、より高い目標に挑戦させることができるようになりました」と、進路カルテの利点を述べる。
 このカルテは、生徒の相談に応じるときだけではなく、進学の力がある生徒を見つけ、教師側から大学進学を提案する際にも役立てている。成績や資格取得の状況から検索できる機能もあるため、国公立大合格の可能性のある生徒を探すことができるようになったという。
 07年度には全校生徒の進路カルテをつくり、項目に生徒の悩みや質問、模試データなどをプラスする予定だ。


  PAGE 11/13 前ページ  次ページ