特集 変わる地方国立大
中條敏雄

▲高松第一高校(香川県高松市立)

中條敏雄

Chujo Toshio

教職歴26年目。同校に赴任して25年。進路指導主事。「困難にもひるまないタフな次世代を育てたい」

片山浩司

▲高松第一高校(香川県高松市立)

片山浩司

Katayama Koji

教職歴、同校赴任歴共に18年。進路指導部副部長。「生徒の可能性を信じて進路指導にあたりたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 4/33 前ページ  次ページ

高松第一高校(香川県高松市立)中條敏雄先生・片山浩司先生

他県の生徒が行きたい大学なら
地元の生徒にもアピールできる

都市部の私立大に魅力を感じる生徒と保護者

 「本校は9割以上の生徒が国公立大志望者。3年間を通じてこの傾向は変わりません」と、高松第一高校進路指導主事の中條敏雄先生は話す。
 「保護者も国公立大志向が強い。公立高校の手厚い指導を受けることによって、公立の学校はしっかり面倒を見てくれると実感していることが、そのまま国公立大の良いイメージにつながっているようです」
 しかし、近年、この傾向が少し変化していると、進路指導部副部長の片山浩司先生は感じている。
 「第1志望の地元や近県の国公立大に合格したけれども、関西の私立大に進学した生徒や東京の私立大に進学させたいという保護者が現れるなど、地元国立大よりも都市部の私立大を選ぶケースも出てきています」

大学の魅力をデータで示してほしい

 この背景には、国立大の良さが風評でしか伝わってこないことが原因の一つと、片山先生は指摘する。
 「地方ではどの地域でも同じ状況だと思いますが、地元の国立大にはその特色がよく知られていなくてもステイタスがありました。しかし、私立大の広報力が強い今、生徒も保護者も上手な謳い文句に目を奪われやすい。国立大も、歴史や伝統だけでなく、具体的な魅力をアピールする必要が出てきたのです」
 他県の生徒が行きたいと思うような魅力を語ってほしい。そうすれば、地理的に有利な地元の生徒はその大学にもっと魅力を感じられる――。その有効な方法の一つはデータだ。教員1人あたりの学生数、科学研究費補助金、就職状況、大学院進学率など、数値を根拠にして客観的に大学の良さを語ると、生徒も保護者も納得しやすいという。
 「理系学部は数値を示して魅力を語りやすいですが、文系学部はデータが示しにくいかもしれません。ただ、地元の大学に進学を志望する生徒は、将来は地元で就職したいと考えています。経済学部なら地元企業との共同研究、教育学部なら地元での就職率などアピールできる材料はあるはずです」(中條先生)
 「幅広さ」も国立大ならではのアピールになると、片山先生は話す。
 「学びたい学問は決まっていても、専攻を特定できていない生徒には、多様な領域の研究者を抱える国立大を勧めています。学びながら進みたい道を決められるのも、国立大の魅力の一つですから」
 いずれにしても、内容を視覚に訴えるなどでわかりやすく伝えることが大切と中條先生は強調する。
 「生徒の中には資料を丁寧に読まない者もいます。オープンキャンパスでも大学案内でも、生徒の目につきやすい方法で伝えることが、訴求力を高める鍵になると思います」


  PAGE 4/33 前ページ 次ページ