「AO入試というと、推薦入試の変形というイメージがあるかもしれせん。しかし、このAO入試は募集人員が6名で、青田買いではありません。入学前から就職まで、学生を継続的に支援する体制を整えた上で実施を決めました」(山本教授)
最大の特徴は、県工業会・県・山形大工学部が三位一体となり、一貫して学生をサポートする体制を構築したことだ。
具体的な流れは次のようになる。AO入試の合格者には、山形県教育委員会と連携し、入学前教育としてレポート提出など3回程度の通信指導を行う。また、学生からの学習相談を受ける「学習サポートルーム」を新設し、きめ細かく支援する。
「既に学習指導に一生懸命取り組んでいる高校だけに押し付けるのではなく、足りない部分は大学が補わなければならない時代になっていると考えています。社会から課された大学の使命を果たしていくのが本学の姿勢であり、そのための支援策です」(山本教授)
カリキュラムには1年生から3年生まで、県内企業の社長らによる講義や、インターンシップなど、多彩な教育プログラムを用意。県工業会の全面的な支援を受け、連携企業先は既に30社以上を確保している。
「何となく就職し、数年後には離職という事態をできるだけ防ぐためにも、『お見合い期間』が必要と考えました。企業はどんな人材が欲しいのか、学生本人はどんな企業に魅力を感じるのか、さまざまな教育プログラムを通して互いを理解した上で選ぶことが大切です。学生と企業との関係を結び付ける授業によって、学生の就職のミスマッチを防ぐことにもなるのです」(山本教授)
3年生になると、大学院理工学研究科ものづくり技術経営学専攻の科目も受講できる。
「学生の質を高めるためには、技術に加えて、意欲やマネジメント力といった能力の育成も重要です。将来、地元産業界のリーダーへと成長してもらうためにも、マネジメントの科目を取り入れました」(山本教授)
しかし、AO入試で入学した学生の中には、4年間あるいは大学院で将来の目標が変わることも考えられる。県外の企業への就職を希望した場合、どう対応するのか。
「入試時にはあくまでも県内での就職を前提に選考します。しかし、学生が発展的に別の道を選びたいというのなら、本人とじっくり相談の上、最良の進路選択に導いていきたいと思います。AO入試で入学した意欲の高い学生には、単に卒業後の就職だけでなく、さまざまなプログラムでリーダー的な役割を果たしてくれることも期待しています。まわりの学生に良い影響を与えてくれればよいと考えています」(山本教授)。 |