特集 変わる地方国立大
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 22/33 前ページ  次ページ

博士課程まで一貫教育を行う特別コースを設置

 愛媛大の研究者育成の方針を特徴付けているのが、募集人員約15名の「スーパーサイエンス特別コース(以下、SS特別コース)」だ(図1)。3つの研究センターに関連する領域の、次世代を担う優秀な人材の育成を目指す。
 同コースの学生は特定の学部に所属せず、入学してから博士課程を修了するまで一貫した教育システムの下で学ぶ。カリキュラムには既存学部の開講科目も含まれるが、3分の1がコース独自の科目となっている。1クラス6、7名という少人数指導と、低学年から研究室のセミナーなどで最先端の研究に触れさせることで、研究者に必要な技能と意欲を育てていこうという試みだ。

図1:「スーパーサイエンス特別コース」と関連する研究センター

 また、大学からの奨学金による4週間の海外語学研修や独自科目の「サイエンス英語」などで、研究者に必要な英語力も養成する。
 「手厚い指導により、学生は『大学から大事にされている』と感じており、満足度もおおむね高い。しかし、課されるハードルが高く、授業についていくのはハードです」と、アドミッションセンターの井上敏憲准教授は話す。そのため、同コースでは「研究者になりたい」という受験生の意欲を重視しており、選抜方法はAO入試のみとなる。入試にも学科試験はなく、書類、講義を受けてのレポート、実験、面接で合格者を決める(08年度入試では、大学入試センター試験利用のAO枠を新設する。また、SSH指定校に限定した枠ではない)。
 「あくまで意欲を重視して選抜し、入学後のきめ細かい指導で研究者としての資質を育てようというのが本コースの方針です。その狙い通り、入学者のモチベーションは非常に高く、本コースの学生の学習に対する積極的な姿勢が、結果的にほかの学部生にもよい影響を与えています」(井上准教授)
 そうして高まった学部生の意欲に応えようと、1年次修了時に学部生がSS特別コースに移ることも可能とした(枠に余裕がある場合のみ)。06年度は2名が転属した。
 「本コースは設置3年目で、卒業生が出るのはまだ先ですが、研究職への就職が厳しいという日本全体の状況は今後もあまり改善されないでしょう。研究者を目指す意欲を保持するためのキャリア教育の充実が、今後の課題です」(柳澤理事)
 07年度には「宇宙進化研究センター」「東アジア古代鉄文化研究センター」を新たに設置。実績を持つ教員がいる分野ならば、理系分野のみならず文系分野の「夢のある研究」にも予算を投じる姿勢だ

高校へのメッセージ
◎高校では、生徒にもっと実験や調査などを多く経験させ、学問に対する意欲や関心をこそ育ててほしいと思います。本学はSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校に大学として参画し、実験や調査といった体験が高校生の意欲を高め、それが学力の伸びにつながるという過程を目の当たりにしました。この経験からも意欲が重要と認識を深めていますし、今後のAO入試の拡大を検討しています。

  PAGE 22/33 前ページ 次ページ