まず医師への入り口となる入試自体を改革した。全国に先駆け、05年度に医学部医学科の推薦入試に「地域枠」を設けたのだ。これは、入試科目などの条件はほかの受験生と同じだが、推薦入試の合格者25名のうち8名以内は、県内の高校出身者とする制度。地域枠は、信州大、島根大、秋田大などの医学部も取り入れている。
「地元出身者は地域に残ることが多いため、そうした学生を優先的に確保するのが目的です」(木本学部長)
更に、08年度入試からは、前述の推薦入試とは別に「佐賀県推薦特別選抜」を実施する。これは、全国の応募者の中から、まず佐賀県が書類選考、面接を経て6名程度を大学に推薦。大学は県から推薦されたこの中から2名を選抜するという入試だ。出願資格の1つに、将来、医師免許取得後に佐賀県内で医療に従事する意志のある者とされている。卒業後は県内で臨床研修を行い、県が指定する大学病院を含む公的医療機関に6年間勤務する。進路については、地域医療において必要性の高い診療科などを選択できるよう、大学や県の関係者と協議する予定だ。
この制度の特徴は、出願者を現役生だけでなく卒業後2年以内の者も対象としたこと、出身高校は県内外を問わないことだ。
前者は大学医学部の推薦入試制度として全国に先駆けて導入、後者は県が実施する推薦入試制度の中では全国初の試みだ。こうした改革に、地域医療を担う人材を幅広く育てようという強い意志が感じられる。
これら2つの入試制度による卒業生はまだ出ていないため、効果はわからない。推薦入試においては、地域枠を行使しなくても、例年8名以上は県内出身者が合格している。木本学部長は「県内の高校を訪問して地域枠などを説明していますが、もと増やしてほしいという要望もあり、手応えを感じています」と話す。 |