指導変革の軌跡 和歌山県・私立開智中学校・高校
和歌山県・私立開智中学校・高校

和歌山県・私立開智中学校・高校

私立の中高一貫校。「人格を鍛えれば、学力は伸びる」を教育理念とし、人間としての品位・品格、たくましく生き抜く体力・精神力、より高い学力の育成を目指す。学力の伸長を目指すと同時に、人間教育にも力を入れる。

設立●1993(平成5)年

形態●全日制/普通科/共学

生徒数(1学年)●約320名

07年度進路実績●国公立大には東北大、筑波大、京都大、大阪大、神戸大、和歌山大、広島大など125名が合格。私立大には、慶應義塾大、早稲田大、同志社大、立命館大、関西大など多数が合格。

住所●和歌山県和歌山市直川113-2

TEL●073-461-8080

WEB PAGE●http://www.kaichi.ed.jp/


西下博通

▲開智中学校・高校校長

西下博通

Nishishita Hiromichi

教職歴42年目。同校に赴任して7年目。「すべての生徒に『志高く、日々新たなり』という言葉を贈りたい」

池田博一

▲開智中学校・高校

池田博一

Ikeda Hiroichi

教職歴27年目。同校に赴任して11年目。進路部長。「生徒一人ひとりの人生を考えた進路指導を心がけたい」

岸本晃和

▲開智中学校・高校

岸本晃和

Kishimoto Akikazu

教職歴20年目。同校に赴任して15年目。1学年主任。「何事にも一生懸命に取り組む生徒を育てたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 5/13 前ページ 次ページ

指導変革の軌跡88


和歌山県・私立開智中学校・高校「初期指導」

初期指導の徹底で「自力」ある生徒を育て進学実績が向上

● 実践のポイント
入学前登校、宿泊研修などの初期指導により早期の意識付けを図る
成績上位層から下位層まで、学力に合わせた手厚い補習
教師の組織力を高め、学年全体で生徒と徹底的にかかわる体制を構築

国公立大100名合格の悲願を達成するために

 「国公立大100名合格」――。この目標を達成するために、開智中学校・高校が初期指導の強化に乗り出したのは、2002年度のことだ。開校以来、同校では一貫して国公立大合格者数が2桁台という状況で、国公立大合格者数を100名の大台に乗せ、全国に誇れる進学校になることは長年の目標だった。進路部長の池田博一先生は次のように述べる。
 「本校に入学してくる生徒は、偏差値が50前半の生徒がほとんど。しかも、塾中心の勉強に慣れているために、自ら学びに向かう姿勢にも弱さが感じられました。より高い志望を実現させるためには、早くから学習習慣を身につけさせる必要がありました」
 同校が初期指導に着目した背景には、量に頼る指導に限界を感じたこともあった。01年度、同校は長年、公立高校で教鞭を執ってきた西下博通校長を招き、指導のてこ入れを図った。目標を達成するためには、教師が一丸となって指導にあたる必要がある。西下校長は「人格を鍛えれば、学力は伸びる」を教育理念に掲げ、「生徒を鍛えて伸ばす」「結果の出る授業を展開する」「組織力を向上させる」という指導方針を繰り返し教師に訴えた。  「やれることは何でもやろう」という雰囲気は次第に広がり、教師は早朝補習、居残り学習、小テストなどさまざまな方策を実施した。「共通理解の下、教師全員が使命感と情熱を持って、積極的に生徒とかかわっていました」と、西下校長は当時を振り返る。国公立大合格者数は、01年度79名、02年度87名と上昇。教師は「来年こそ」と期待したが、03年度は98名と目標達成に一歩及ばなかった。
 もう一段上を目指すには、学習面の量対応だけではなく、早期からの働きかけが必要だ。特に、中1からじっくり時間をかけてかかわれる内進生よりも、外進生に対して早期の意識付けができるかどうかは進学実績を左右する。そう考えた同校は、外進生を中心に初期指導を強化する方向へと舵を切ったのである。

入学前指導は3年間の原点

 同校の初期指導は入学前に始まる。2月上旬と下旬、3月下旬の計3回、合格者登校日を設け、入学までにすべきこと、高校生活の心構えなどを指導する。2回目の合格者登校日にはベネッセの「スタディーサポート」を行い、生徒の実態把握に努める。同校には和歌山県全域、大阪府南部から生徒が入学してくる。中学時代の教科書の内容や学習の進度にもバラツキがあるため、個々の生徒の学力や学習習慣を把握することは、指導をスムーズに行う上で重要だ。
 高校での学習の厳しさを体感させることも、入学前登校の狙いの一つだ。1回目の合格者登校日に国数英理社の5教科の課題を与え、2回目の登校日での提出を義務付けている。課題は、生徒がスタディーサポートを受けている間に教師総出で添削。生徒一人ひとりにアドバイスを書き、その日のうちに返却する。提出しなかった生徒には厳しく指導し、3回目の登校日に提出させる。1学年主任の岸本晃和先生は次のように話す。
 「最後に力を発揮するのは、腰を据えて最後まで粘り強く頑張った生徒です。そうした『自力』を身につけさせるためには、初期指導で徹底的に自宅学習の習慣付けをすることが大切です。その意味で、入学前指導は高校3年間の原点と考えています」


  PAGE 5/13 前ページ 次ページ