指導変革の軌跡 和歌山県・私立開智中学校・高校
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「ホウ・レン・ソウ」を徹底し、教師の組織力を強化

図2:英語の予習への取り組み

 初期指導の強化とモチベーション維持の工夫により、学習習慣が定着し、生徒の予習への取り組みは学年を追うごとに向上している(図2)。その成果は進学実績にも表れ、初期指導を強化した最初の3年生が受験した05年度入試で国公立大合格者が143名となり、ついに目標を達成した。06年度は更に実績を伸ばし、同校の実力が一過性のものでないことを示した(図3)。

図3:国公立大合格者数の推移

 この成果は、初期指導の強化が直接的な契機になったことは間違いないだろう。しかしその背後に、教師の熱意と団結があったことを見逃してはならない。特に、西下校長が赴任以来訴え続けてきた「組織力の向上」は、同校の躍進を支える原動力となった。
 「担任経験が長い教師ほど、生活指導にせよ教科指導にせよ、つい自分1人で何とかしようと思いがちです。しかし、担任1人では限度がありますし、孤立して1人で悩みを抱え込んでしまうことにもなりかねません。学年団の間で『ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)』を徹底し、常に組織で行動することを意識しました」(岸本先生)
 例えば、教科指導。以前は各教科でバラバラに宿題を出していたが、教科間で話し合い、宿題の量を決めたり、全体的に成績が落ち込んでいる教科については多めに宿題を出したりと、学年全体でバランスをとるようにした。
 生活指導も同様だ。若手教師の中には、服装指導などで生徒に厳しい言葉をかけられない教師もいる。そういう場合、必ず担任や学年主任に報告し、いずれかの教師が必ず指導する体制を取った。
 もちろん、こうした意識はすぐに浸透したわけではない。「ときには、『なぜ報告しなかったんだ』と教師を叱責することもあります。私自身、校長から指導を受けたこともあります。しかし、そうした厳しさがあってこそ、学年団のまとまりが生まれると思います」と岸本先生は述べる。
 進学実績が向上するにつれて、教師が自らアイデアを出し、率先して実行に移していく姿勢も見られるようになった。3年前に始まった英語科の勉強会もその一つだ。若手教師が中心となって週1回集まり、教材のつくり方やテストの作問、解答・誤答の分析の仕方などを学び合う。07年度には、教員研修に関する企画を担当する総務部を立ち上げ、学校全体で授業改善の方法を模索していく動きにまで広がった。
 08年度からは、中学ではスーパー理進クラスを、高校では現在のⅠ類、Ⅱ類に加えて、難関大を目指すSⅠ類を設置する予定だ。次なる飛躍に向けて、着々と布石を打つ同校の今後に注目したい。


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